ボリス・ベレゾフスキー リサイタル ― 2013/11/20 22:42
今日(11月20日)はオペラシティでベレゾフスキーのリサイタルを聴いてきました。久し振りです。10年以上彼の演奏は聞いていないかな。90年代は毎年のように聞いていた気がするんですが・・・
ダークスーツにワイシャツ、ノーネクタイというスタイル。プログラムは前半がラフマニノフ。まず前奏曲を7曲。作品32−2、3、4、5、9、10、13。最初から指はよく回るし、ピアノをよく鳴らしているし、音はきれいだし・・・でもなんかちぐはぐ。何かしっくりこなかったんですが、最後の変ニ長調はさすがに曲の構造に響きがぴったり寄り添ってきました。
次にピアノソナタの第2番。短くした改訂版の方です。楽章間もほとんどインターバルを取らずにぐいぐいと弾き進めて全体で15分ぐらいかな? 情緒纏綿たるこの曲を実にさらっと弾くんだけど、それでもロシアの叙情を満々と湛えた名演。
後半はシャツを黒にお召し替えで、上から下まで真っ黒けで登場。ドビュッシーの前奏曲を7曲。第一巻から1、3、6、7、8、9、12。それぞれに練り上げられた極彩色の音色をちりばめて、ものすごく工夫しているのはわかるんですが、如何せんドビュッシーじゃない。曖昧模糊としたも霧の中にぼやっとした音の姿が見え隠れするようなファジーな味わいっていうのがなくて、全てが明確な光の中に像を結んでしまう。日本の時代劇みたいな勧善懲悪的な予定調和の世界と言ったらよいのか、あるいはロシア音楽の甘美な叙情の世界なのか。9番のギターのかき鳴らしを模した「とだえたセレナード」、そして12番の賑やかな「ミンストレル」の世界、ここらへんは楽しめました。
最後にラヴェルの『夜のガスパール』。前半と後半がプログラムの見開きのように、前奏曲で始まり、大曲で締める構造になっています。そして、ラフマニノフとラヴェルはほぼ同世代。ドビュッシーは彼らより一回り年上なんですが、これらの全ての曲が1910年前後に作曲されているという面白いプログラム。『夜のガスパール』はこれらの中で一番早く1908年に作曲されているんですが、ベレゾフスキーが最後に持って来ただけあって、こいつは面白かった。やっぱりトリに弾くだけのことはある。難しい曲だけど、一見何気ない素振りでさらっと弾いている。だけど、音の鳴らしかた、響かせかた、ペダルの余韻・・・全てが計算され尽くした、非常にモダンな演奏スタイル。水の精のおぼろな幻影を描く『オンディーヌ』、不気味な鐘の音が印象的な『絞首台』、いたずらな小悪魔を軽やかでダイナミックなタッチで聞かせてくれた『スカルボ』、これは心底楽しめました。
最後に呼び屋(梶本)の仕掛けなんでしょうか、5曲連続のアンコール。15分間のミニリサイタルといった感じです。あらかじめ、「5曲のアンコール曲目を的中させたら、今晩ベレゾフスキーと一緒にロシアレストランに行って酒池肉林」というアンケート用紙がプログラムに挟み込まれていて、ハーフタイムまでに投票すると、終演後当選者発表ということになっていたんですが・・・
1. ドビュッシー「映像第1集」より「水の反映」
2. チャイコ「四季」より「10月秋の歌」
3. レビコフのワルツ
4. ドビュッシー「映像第1集」より「運動」
5. ショパン 練習曲作品10から第1番
残念ながら全問正解者ナシ。でも4曲当てた人が多数いたっていうんだが
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絶句
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キーシン坊やなんかがちょっと別の世界に行っちゃったのが残念ですが、ベレゾフスキーはロシア・ピアニズムの王道を歩んでいる感じ。10数年振りに聞いて本当によかったと思います。
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