桑形亜樹子チェンバロ・リサイタル2016/01/10 16:28

昨日(1月9日)は茗荷谷のラリールで桑形亜樹子のチェンバロを聞いてきました。「対位法〜宇宙の摂理〜」というシリーズの4回目(最終回)で、プログラムには「祝 ヨハン・ヤーコプ・フローベルガー生誕400年 1616-1667 vs. ヨハン・ゼバスティアン・バッハ 1685-1750」というサブタイトルが踊っています。

フローベルガー・イヤーと言ってもまあ、知る人ぞ知るってことですけど、すばらしい鍵盤曲をたくさん作曲した人です。対位法のシリーズですから、もちろんフローベルガーって人もリチェルカーレとかカプリッチョのような対位法プロパーの作品も数多く書いています。でもやはり面白いのは組曲。アルマンド、ジーグ、クーラント、サラバンドという並びはどことなく古風な雰囲気が漂いますけど、堂々として、しかも華やかなサラバンドで締めくくるのもまた一興。でも好きなのはアルマンド。この日はラメントやらトンボー系の陰々滅々だったり感情の起伏が大きい曲は演奏されませんでしたが、それでもフローベルガーのアルマンドは時間の均一な流れに棹さす如く、後ろ髪を引かれる瞬間があったかと思うと、突然脇目も振らず走り出して、でもすぐに立ち止まってしまうような不思議な舞曲(?)。演奏家がどれだけ自由に時間をコントロールできるかが聞き所と言えるでしょう。

まずFbWV(フローベルガー作品番号)402のリチェルカーレ。かなり厳格な4声の作品。それからFbWV 607の組曲。ジーグはもちろん、アルマンドもそしてサラバンドでさえ対位法的な音の対比ないしは、旋律の対比が面白い。続いて弾かれたバッハのアルマンド2曲(リュート組曲ホ短調、フランス組曲第4番)と比べると、曲の作りや響き方がまるで異なっているのがわかります。次にメラー手稿譜から組曲変ホ調。バッハのカプリッチョの写しが載っている楽譜集ですよねぇ。フローベルガーもバッハ一族に知られていたというわけか。(追記:Möller Manuscriptにフローベルガーが入っているというのが、どうも腑に落ちない???)ふむふむ。次にFbWV 502のカプリッチョ。3つ4つのパートからできてるフーガですが、リズムやテンポの対比もなかなか面白い。FbWV 412のリチェルカーレは嬰ヘ調となっていますが、音符一つ一つにシャープが付いている感じ。かなり珍しい調子なんですが、エアコンが効かない猛暑の室内で、チューニングがどんどん崩れていったためか、さほど違和感なく聞けました。前半の最後はバッハのフーガの技法からコントラプンクトゥス9。一人で演奏するのは大変でしょうねぇ、でもそんな雰囲気は微塵も見せることなく、爽やかにオクターブの跳躍を決めていました。

いつもはチケットを持っているとそのまま入れたんですが、今回は30分も前に到着したのに当日精算の人々の列の後ろに延々と並ばされて、やっと中に入ったらとんでもなく狭苦しい席しか残ってなくて、おまけにこの暑さ。かなり往生しました。前半で帰ろうかなとも思ったんですが、まあ何事も我慢が肝心。後半はフローベルガーのトッカータFbWV 108。自由な音階的パッセージがひとしきり走り回った後、対位法的・重層的部分に入り、それが次第に切迫してクライマックスを築く構造は多分フレスコバルディから受け継いだものなんでしょう。走句と対位法の対比、そして比較的緩く作られた対位法部分の盛り上がりは、いつ聞いてもワクワクします。次にバッハの4つのコラールとコラール編曲。初めて聞く曲でよくわからないけど、3番目のBWV 722が面白い編曲だったかな。これはまあ、対位法音楽の頂点と言ってもいいんでしょう。

それからフローベルガーを3曲ファンタジアFbWV 202、マイヤリンの変奏曲とクーラント、サラバンド、それにリチェルカーレFbWV 406。変奏曲ってフローベルガーの作品の中ではちょっと異色ですが、何ともかわいらしくてきれいな曲ですねぇ。ファンタジアは厳格な書法の対位法。すごいとは思うんだけど、それが面白いかというとちょっと言葉に詰まるところ。リチェルカーレは嬰ハ調という奇妙な調子ですが、調律が崩れちゃっていたこともあって、まあまあそう違和感なく聞ける範囲。最後にバッハのフーガの技法からコントラプンクトゥス7。手練手管を駆使して作り上げた化け物のようなフーガですが、でも決して譜面の上で良くできていると言うだけじゃない。音を聞いても、うん、そうなってるのかって思いながら、いつの間にか心地よい音の奔流の中に身を任せることができる、そんな演奏でした。


ダバダバダーでバッハのコントラプンクトゥス9



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この数日快晴無風の日が続いています。もう半月ぐらい雨が降っていないような気がする。うん、なんと正月になってから屋上に水を撒いたぞ。




ブルームーン

アリスター・ステラ・グレイ



このところの暖かさで、カロライナ・ジャスミンが咲き始めました。



去年の秋に植えてみた矮性のナデシコ

カワラナデシコ

生き残っていた園芸種のナデシコ

レディ・ヒリンドンはまだまだ咲き続けています。

いつもの冬だと北風に煽られ枝が擦れて、花がボロボロになっちゃうんですが、今年は風が吹かないんで、きれいに開いています。


マダム・アルフレッド・カリエール


まだまだ蕾が残っています。

イエロー・シンプリシティ



スミレ



花びらをちぎっていくのは、小鳥かな、カラスかな。

コメント

_ 桒形亜樹子 ― 2016/01/11 10:19

本当に暑くて、おまけにお待たせしてしまったようで申し訳なかったです。切符お持ちの方は先に入れるべきですよね。受付の者に言っておきます(一応プロなのですが)。温度は始まるまでかなり涼し目に設定していたのですが切っても下がらず、、、どうもここの空調とは相性が悪く(おまけに前3回は雨で)急激な湿度上昇で前半楽器の鳴りも悪かったようです。今回は楽器の場所を少し変えてみたのですが。今回は4回同じ会場を取ってしまったので、次は淀橋教会に戻そうかと思います。さて調律はリーマンという、バッハがもしかするとこんなのを使っていたかもしれないという方法で、ある部分は平均律のものでした。嬰ハ長調とか出て来るのでこれにしました。というわけでそんなには崩れていませんでした。林氏が完璧にこだわったので時間がかかりました。あとは例によって30%しか湿度がなく、朝10時搬入では落ち着かなかったです。どんどん下がってしまいました。というわけで言い訳を書かせて頂きましたが、毎度のご来場と的確なご感想本当に恐れ入ります。フーガの技法は死ぬ迄に弾けるといいのですが。取り急ぎお詫びと御礼迄。

_ デデ ― 2016/01/11 14:48

桒形さんこんにちは。先日はすばらしい演奏を堪能させていただきました。あのホールは温度や湿度の調整が難しそうですね。

調律はそうですよねぇ、フローベルガーとバッハを弾かなきゃならないわけですから、平均律に近いものなんだろうなとは思ったんですが・・・

また機会があったら楽しい演奏を聴かせてください。

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