新日フィル2013/02/28 18:07

昨日(2月27日)は東京芸術劇場で新日フィルの演奏会を聞いてきました。毎年今頃やっている都民芸術フェスティヴァルの公演。鈴木、石原と延々と続いた都政のお陰で、文化的な活動にまで対価主義が徹底して、チケットはまあいいお値段になっています。こんなことやっておいて、またオリンピックを東京でやりたいんだってさ。誰の金でやるのさ? まあ、連中の頭の中ってすごく単純で、わかりやすいんだけど。

指揮は10日ぐらい前にも聞いた井上ミッキー。彼は大昔に新日フィルの常任かなんかやっていましたよね。でも辞めちゃったのはなんかわだかまりがあったのかな? え〜と何をやるのか考えずに出かけたら、前半がチャイコフスキーのピアノコンチェルト。後半がシンフォニーの5番ということでした。名曲コンサートですニャー。

で、当日の目玉はピアノのイリヤ・ラシュコフスキーというお兄さんだったらしい。1984年生まれというから、28か29歳。2001年のロン=ティボーで2位。2012年の浜松国際ピアノコンクールで優勝したんだそうだ。ロン=ティボー入賞から10年以上経って、日本のコンクールに出てくるっていうのは、どういう意味かよくわかりますね。大抵のコンクールで2位以下ってのは忘れ去られます。もう一度なんかインパクトが必要だったんでしょう。

有名なソフトバンク・プラチナラインの音楽が響き渡ります。ピアノが和音を掴んで目一杯叩きつけるようなアルペッジョを弾くんですが、なんと汚らしい音! 和音が弾けてないよ。一体どうしたんだ?

多分かなり緊張していたんでしょうねぇ。冒頭のクラッシュをなんとか切り抜けると、その後はかなりリリカルなピアノが聞こえてきました。ガヴリーロフとか、キーシンとか、ベレゾフスキーとか、古いところだとソコロフとか、現役バリバリのロシアのピアニストは、そのデビュー当時に大抵聞いているつもりなんですが、ラシュコフスキーは今挙げたどの人とも違う。最初はやけに非力で、でも抒情的なピアニストなのかなと思ったら、あながちそれだけではないみたい。歌心が一杯に詰まったソロを弾いたかと思うと、トゥッティでも次第に力を増してきて、第3楽章はロシア正統派のエンディングになっていました。何なんでしょうね? 本番に弱いのかな。アンコールでは浜松で弾いたという、プロコフィエフの3番コンチェルトの第3楽章をさらっと弾いて見せたりして、ホントはうまいラシュコフスキー君なのかもしれない。

ただ先に名前を挙げた人々に比べると、音楽的なメリハリが足りない。音楽の輪郭が霞んでいます。特にグランドマナー・コンチェルトを弾く場合には、細部ももちろん弾けなくちゃまずいけど、全体の構築感をいかに出すかがポイント。これができるかどうかで、音楽のスケールが全く変わってしまいます。

後半のシンフォニーはよく鳴っていました。あるいは井上流によく鳴らしていたといったほうがいいかな。まるで(ショス)タコのような響き。バランス感覚がややもすると曖昧になるところがあります。それから木管楽器のハーモニーがすごく汚らしいときがあります。あれはどうしたんだろう? でもまあ、全体的によく鳴らして、楽しい演奏だったと思います。お客さんもまあまあ、入っていました。

新日フィルというと錦糸町、川向こうですよね。まず日頃聞く機会がないオケですけど、こういうチャンスにたまに聞くのもいいですね。昨夜一番印象深かったのはコンマス豊嶋泰嗣の頭部。最後に見かけたのは、漆原なんかとハレーSQをやってた頃だから、20年ぐらい前? 昨日見てかなりショッキングでしたよ。