新国立劇場 リヒャルト・シュトラウスの『サロメ』2016/03/10 16:03

昨日(3月9日)は二国で『サロメ』を見てきました。舞台写真はこちら。スタッフ&キャスト、あらすじ、動画等々はこっち


二国でこのアウグスト・エファーディング演出による『サロメ』の上演は今回で実に6度目。オペラ十八番中の一、といったところ。もともとバイエルンのための演出を東京に持ってきたんだっけかな、そんなわけで2000年に東京で初めてやった時には、エファーディングはすでに幽明界を異にしていたことになります。それから16年経っても連日満員のお客さんを集められるという、実にすばらしいプロダクション。

今回の上演ではまずもってヨハナーンのグリア・グリムスレイというのがよかった。声もさることながら、舞台上での立ち姿がすばらしい。これぞまさしく洗礼者ヨハネ! 来シーズンのワルキューレではヴォータン、ジークフリートではさすらい人をやるんだそうで、いやあ楽しみです。

それからカミッラ・ニールントも可憐と狂気が入り交じった掲題役にぴったり。今まで6回の公演で、踊りで一糸まとわぬ状態まで脱いだ人が一人いたかな?でもちょっと記憶が定かじゃない。今回は肉襦袢の上にブラとパンティーはつけていたけど、あそこまでは脱いで欲しくなかったなぁ。服を着ているときれいに見えても、あそこまで脱いじゃうと、豊満なバストはともかく、偉大なるウェストとヒップ、ボンレスハムのようなおみ足などなど・・・人目に晒さず、観衆の想像を密かにかき立てるだけでよかったのではなかろうか。たとえは良くないかもしれないけど、中島啓江とか森公美子が脱ぐところを見たいか? もちろんニールントはそこまでのデブじゃないけど。

ヘロデを歌ったクリスティアン・フランツは二国でジークフリートやパルジファルなんかを歌ってますが、背が低くて、横幅がちょっとあって・・・要するにチビ・デブ・ハゲの三拍子が揃って、気の良いヘロデにぴったり。それからヘロディアスのハンナ・シュヴァルツ、前日はイェヌーファの「おばあさん」役をやっていましたが、この日は打って変わって恨み骨髄に徹する役どころをクールに歌っていました。代役で登場ということでしたが、東京までやってきて持ち役がぴったりはまるとは、ほとんど奇跡的な偶然。

同じように聖書を題材としたサン=サーンスの『サムソンとダリラ』。あれだけユダヤ人一辺倒の勧善懲悪物語だと、ちょっと感興を削がれるし、サムソン・オプションなんて言葉の語源になっちゃうのも宜なるかなって思いますが、『サロメ』はやっぱりワイルドの原作がよくできてますねぇ。エロ・グロ・ナンセンスの極みみたいなストーリーだけど、なぜか見るものの共感を呼ぶ。

ダン・エッティンガー指揮の東響はちょっと荒かったのも確かだけど、豊穣な音楽を紡ぎ出して、久々に音楽にどっぷり浸かることができた2時間でございました。前日に見た『イェヌーファ』よりも20年以上前の20世紀初頭に作曲された音楽でありながら、響きはより現代的で研ぎ澄まされています。こうやって並べて聞いちゃうと、作曲家の才能の違いってやつも否応なく感じてしまいますねぇ。

ところで、女性と男の生首というとまず思い出されるのは『ユーディット』でしょうか。敵将を誘惑して生首を掻き取ったユダヤの未亡人。ユディット・コンプレックスなんて言葉の語源になっています。ヴィヴァルディは有名なオラトリオを作曲しています。

ボッティチェリのユーディット。今都美術館に来ています。

ボッティチェリ、切り落とした生首を侍女が運んでいます。

ボッティチェリ、寝首を掻かれたホロフェルネスの死体

これはカラヴァッジョのユーディット。きれいな女性ですねぇ。

クラナッハのユーディット

クリムトのユーディット


そしてもう一つ、男の生首を持つ女といえば『サロメ』。聖書とユダヤの年代記をもとにオスカー・ワイルドが書き下ろした戯曲ですが、シュトラウスのオペラはワイルドの原作をほぼ忠実になぞっています。

オスカー・ワイルドの『サロメ』に付けられたビアズリーの挿絵です。子どもの頃岩波文庫は★一つ50円でした。2ページおきにきれいな挿絵が入った『サロメ』がたったの50円。現在では389円です

銀の皿に載った洗礼者ヨハネの生首をうっとりと眺めるサロメ。

サロメは生首に口づけします。

あ、思い出した。今回の公演ですが、首切り役人の肉体が貧相じゃなかったか。演技力は必要ないんだから、若手のプロレスラーかなんか連れてきたらよかったのになぁ。このロイヤルオペラの首切り役人はいいね。ちなみにロイヤルオペラのこの一つ前のプロダクションではマリア・ユーイングがオールヌードになりました。別れた元旦那の演出だったんだが・・・まさかリベンジ・ポルノ元祖とか?

カラヴァッジョのサロメ

クラナッハのサロメ。料理を運んできたメイドみたいです。

ティツィアーノのサロメ




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先日の雨も40ミリほど。昨日の雨も40ミリほど降ったみたいです。このところ雨がよく降って、植物にはいいお湿りじゃないかなと思います。今日はどんよりと曇って肌寒い一日。最低気温4℃、最高気温8℃で、真冬に逆戻りです。屋上のクロッカスはそろそろ終わりに近づいています。

紫の単色はまだもうちょっと花が残っているかな。


紫の絞りは満開を過ぎています。






白はほぼ満開





サロメの7つのベールの踊り。何かの映画みたいです。

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