スクロヴァチェフスキ指揮の読響で、パッサカリア・イマジナリア、ブルックナーの4番 ― 2013/10/15 19:28
昨日(10月14日)は池袋の芸術劇場でスクロヴァチェフスキ指揮の読響を聞いてきました。4日の演奏会がとても充実していたので、もう一度聞いてみようかなということです。4日の演奏会は平日の昼間の単発の演奏会のようで、4割ぐらいしかお客さんがいませんでしたが、昨日は休日のマチネ・シリーズというのに組み込まれている演奏会で、ほぼ満席に近いお客さんが入っていました。
前半にスクロヴァチェフスキ作曲の『パッサカリア・イマジナリア』。この曲は1995年作曲となっていますが、聞いた感じではショスタコをもうちょっと突き詰めた感じ。面白い打楽器の使い方をして、新鮮でしかも美しい(←これ重要)響きが至る所から立ち上ります。確かに低音主題が執拗に繰り返されるんですが、時にそれが高音に吸収され、聞き手のイメージの中でだけ鳴っていたり、あるいはまたリズムの中にそこはかとなく低音が漂っていたりして、とても面白い曲。ショスタコ風でもあり、色彩豊かなメシアンの管弦楽法を踏襲しているようでもあり、非常に凝った作りの作品でした。読響も指揮者=作曲家の意図を汲んで、緻密かつダイナミックな演奏を繰り広げていました。これは現代作品ではありますが、これから演奏会の定番メニューに入っていく作品じゃないかなって気がします。
後半はブルックナーの4番。前半の巨大オーケストラに比べると、ブルックナーでさえ小ぶりの編成に見えます。弦のトレモロに乗ってホルンが深い響きを吹き始めます。まあ、ちょっと傷はあるにしても、それなりに読響のホルンだって頑張っていたんじゃないかと思います。それよりもスクロヴァチェフスキの作り出す音楽が、実に理路整然としていて、まるでモーツァルトを聴いているみたいに見通しがいい。これは4日のショスタコの時にも感じたんですが、この爺さんやるねぇ。ブルックナーの何というかネバネバした膠着質の音楽から、フィナーレに向かって突き進む薄暗いほのかな道筋を明確に描き出し、オケのメンバーにもはっきりと指し示して理解させているのがよくわかります。
ホルンにとってはかなり難しい曲目なんでしょうね。ちょっと残念なところがあちこちにみられましたが、スケルツォの狩りのホルンでしょうか、あの軽快なアンサンブルはみごとでした。全体的に金管がよく鳴っていて、すっきりとした味わいのブルックナー。でも弦も木管も弱音から最強音まで、きれいに響いていました。
2回続けてこの指揮者の演奏を聞きましたが、一番聴き応えがあったのは、4日のショパンかなぁ。ベルント・グレムザーというピアノ弾きは発見でした。また呼んでくれないかね。
最後に読響独自の方針だと思いますが、演奏が始まる前に「指揮者の手が下りるまで絶対に拍手をしないでください」というアナウンスがあって、なんだろうねぇこれはって気がしました。案の定、ブルックナーが盛大に終わったあと、まあ何とも表現しがたい、奇妙な気まずい空気がホール内に充満し、カタルシスに欠ける尻すぼみの演奏会になってしまいました。余韻を楽しむのではなくて、沈黙を強制されたお陰で、音楽の高揚感が台無しになってしまいました。あの馬鹿馬鹿しくて無粋なアナウンスはなんとかならないものか。
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