新国立劇場 ヴェルディ『椿姫』2015/05/20 12:15

昨日(5月19日)は二国の『椿姫』を見てきました。前回のヴィオレッタがパトリツィア・チョーフィ、ジェルモンがルーチョ・ガッロ、その前の上演ではエレーナ・モシュクなんかも登場していた、ある意味二国の看板メニューですね。ルーカ・コンローニの正当派の演出は多くの聴衆の支持を得ていたように思うんですが、今回は新演出での上演です。

舞台写真はここ。ダイジェスト映像はこちら。スタッフ&キャスト等々はここです

ヴァンサン・ブサールの演出に関しては賛否両論喧しい限り。江川紹子はツイッターでぼろくそにけなしていたとかって話ですが、私は面白かったですね。舞台上は最小限の道具立て、というかプレイエル(?)のピアノが一台だけ。たぶんこんなモデル。(訂正:違ってた。エラールですね。こんな形で、象眼が施されていました。)これが華やかな夜会のお立ち台になり、書斎のデスクにもなり、ヴィオレッタの死の褥にもなる。舞台の背景に巨大な鏡。床も鏡。登場人物の姿を上下左右からくまなく映し出します。二人が客席から見て前後に向き合っている場合でも、どこかの鏡に後ろ向きの人物の顔の表情が映ります。無理に正面を向く必要がないため、自然な演技や動作が可能になります。それとライティングもうまかったな。主役にベタにスポットを浴びせるんじゃなくて、正面を向いて歌っていても、顔に陰影があってごく自然。

衣装がきれい。女性陣も取り立ててデーハーな色使いの衣装ではないんですが、シックな色合いが舞台全体の色彩を落ち着かせていました。男性は基本的に燕尾服かフロックコートですが、これも実に洗練されたフォルム。落ち着きのある華やかさを引き立てていたと思います。夜会のシーンでは背景の書き割りがオペラ・ガルニエの内装。これが鏡に反射してゆがんで見えたり、あるいはアルフレードがヴィオレッタに札束を投げつけるシーンでは、建前上の世界観・価値観が崩壊していくのを象徴するかのように、書き割りが後ろに倒れ、ぽっかりと虚無の世界が姿を現します。

ヴィオレッタとアルフレードの愛の巣では、中空にぶら下がったパラソルと、ホリゾントに描かれたカモメの群れ。パラソルは何となく『失われし時』を暗示しているのかな。カモメはプロヴァンスかな。

全体の構成としては従来の第2幕第1場までを1幕にまとめ、それ以降が第2幕という形なっていました。休憩を2回取るよりも短い芝居だから中間で休憩にするっていうには良いアイディアだし、愛の巣の崩壊の場面で幕にするのも理にかなっていると思いますね。ヴィオレッタの死の場面。堅いピアノの上で演技するんで、大変かなと思うんですが、このピアノがヴィオレッタ、そしてデュマ・フィスの原作のゴーティエ、さらにそのモデルとなった実在の娼婦マリー・デュプレシを象徴するものらしい。愛するピアノが死の床になるという仕掛け。アルフレードが駆けつけてくると、ピアノの背後に紗幕。二人は紗幕越しに最後の幕を演じます。まるで薄い紗幕が生きるものと死に行くものとを隔てる三途の川であるかのように。そして音楽が終わらないうちに緞帳が下りてきて、ヴィオレッタだけが幕の外に取り残されて立ち往生。こう書くとまるで弁慶みたいですが、これが自分の意思で陽炎のような人生を生き抜いた一人の女性の死に様を見事に印象づけていたと思います。

主要3役の歌手について、寡聞にして名前も初めて聞く人たちですが、すばらしかったです。ヴィオレッタのベルナルダ・ボブロは軽やかな声もさることながら、抜群の演技力で聴衆を虜にしました。アルフレードのアントニオ・ポーリは若々しいボンボン。ジェルモンのアルフレード・ダザは美声のバリトンでした。二国は3回目ぐらいかな、イヴ・アベルの端正な指揮が芝居全体を引き締めていました。さらに毎度のことながら、二国の合唱団は凄いねぇ。圧倒されました。

わざわざ新演出にする必要があるのかなって思いつつ出かけた次第ですが、このすばらしい舞台に接することができてホントによかった。このところ『リゴレット』、『ナブッコ』と、ヴェルディの演出は失敗続きだっただけに、この舞台が二国のレパートリーに入るということが実に喜ばしい、舞台を見ながらそんな風に思った一夜でした。



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一昨日の写真です。

玄関先のスノー・グース

アンジェラ

アンナプルナはほぼ満開。

端正な花形になってきました。

ダリアが咲き始めました。

バラは全体的に満開をちょっと過ぎました。



黄色いドゥフトゴルト

クロチルド・スーペール(粉粧楼)と真っ赤なクリムゾン・グローリー

雨が少ないのでクロチルド・スーペールがよく開いています。

ラ・フランス



花壇ではスミレが終わりかけ。一方でバーベナの花が多くなってきました。



ミニバラがもうちょっとで満開です。


レディ・ヒリンドン(白)、ラ・フランス(ピンク)、パパ・メイアン(赤)

カワラナデシコとシラン


ホワイト・クリスマス

ヴァイオリーナ