アリーナ・イブラギモヴァ ヴァイオリン・リサイタル@所沢ミューズ ― 2016/03/31 11:45
昨日(3月30日)は真っ昼間から所沢ミューズの中ホールで、アリーナ・イブラギモヴァのヴァイオリンを聴いてきました。さる方面からのたれ込み、いや情報で、なかなかいいらしいというので、平日の昼間に所沢まで出向いて、当日券で聴いてきました。平日だというのに、たぶん800人ほど入るホールがほぼ満席なんですよ。池袋からだと乗り換え時間も入れて40分。駅から徒歩10分。近くはないけど、それほど遠いって感じでもないですね。川崎に行くよりは楽。
さてさて、一曲目にいきなりビーバーのパッサカリア。『ロザリオのソナタ』の中の無伴奏曲ですね。下降主題がノンビブラートのかそけき音で開始されると、「おや」調子が悪いのかななんて感じたんですが、次第に楽器も鳴り始めて、ビーバーの手練手管が繰り出されるに従って、そりゃもう手に汗握るというか、ハラハラ・ドキドキ。まあ結果的にはそれほどでもなかったんですが、それにしても凄いヴァイオリン弾きです。
二曲目のバッハのパルティータ第2番になってやっと本領を発揮し始めた感じ。というか、バッハと並べちゃうとやはりビーバーはビーバー。小者だな。アルマンドはかなり自由にテンポを揺らすんですが、それでも一点一画おろそかになる瞬間がない。クーラントは「あれ」って思うくらい速いテンポで鋭角的に弾き進んでいきます。決して遅いわけじゃないんだけど、永遠に続くかと思われるほどゆったりと流れるサラバンド。だけど、3拍子のリズム感は壊れない。無窮動のように突き進むジーグ。唖然とするようなテンポなんですが、ジーグの対位法が鮮やかに浮かび上がってきます。そしてシャコンヌ。あまりにも完璧に弾けてしまって、ちょっと立ち止まってみることも必要かな、なんてこちらが心配したくなるような演奏です。11年前のビデオが転がっていました。
* シャコンヌ
20分の休憩を挟んで、後半はまずイザイの無伴奏ソナタ第3番「バラード」。単一楽章で7分ほどの短い曲ですが、ヴァイオリンの手練手管の限りが盛り込まれている感じ。この曲では技巧もさることながら音色の面白さが際立っていました。ソット・ヴォーチェでささやくような開始から、次第に熱がこもって、重音を積み重ねていく。でもまた穏やかになって・・・そんなことを繰り返していくんですが、動と静の対比と音色の使い分けが絶妙だったと思います。これも録音セッションの映像があります。7分あたりからの最後の追い込み、圧倒的な迫力と音程の正確さは誰にも真似できないんじゃないかな。
この日の最後はバルトークの無伴奏ソナタ。これも大変な名曲・難曲です。たぶんバッハの無伴奏を意識して書かれたんじゃないかと思うんですが、やたらと重音が多くてしかも対位法的に作られているみたい。重い音を積み重ねていくほど何か寂寥感が漂います。この曲でも技術以上に音色の豊かさが印象的でした。第2楽章のフーガはバッハへのオマージュじゃないかと思いますが、鋭角的に攻める演奏。もの凄い音がホールに響き渡りました。このビデオの8分50秒あたりから。
第1楽章(シャコンヌのテンポ)と第2楽章(フーガ)
メロディアと名付けられた第3楽章の民謡風のフレーズは祖国を離れたバルトークの郷愁でしょうか、哀愁でしょうか。フラジオレットも含めて音色のコントロールがすばらしい。第4楽章はロンドかな、無窮動風の刻みと力強いフレーズが交互に現れ、正確無比なスケールでフィナーレを迎えます。いやあ凄いヴァイオリン弾きですニャー。
第3楽章(メロディア)と第4楽章(プレスト)
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1週間ぐらい前に開花した東京の桜ですが、その後の冷え込みでまだ満開になっていません。昨日は20℃を超えて、少し花が多くなるかなって期待を込めて所沢まで出かけました。実は駅を降りてからホールまでの間に航空公園という広大な公園があるんで、そこでちょっとは花見ができるんじゃないかと思っていたわけです。
で、花見と言えばまず弁当ですよ。えい、年に1回のことだってわけで、テパ地下で美濃吉の弁当を買い込みました。「美濃吉」と「なだ万」は和食の両雄。なんてちょっと大袈裟か。「吉兆」は一人の天才料理人が一代で築いたのに対して、この二つは電灯の上に、あ、違う、伝統の上にあぐらをかいている。いやいや、長きにわたって古き良き伝統を受け継いできた老舗。ただ味は全然違うんですねぇ。大阪発祥とはいっても、なだ万は完全に東京の味になっています。味付けが甘ったるい。それに対して美濃吉は京都の味を守っていると思います。煮物の味で違いが一番わかるかな。あ、だし巻き卵もまるで別物ですね。なだ万は寿司屋の厚焼き卵みたいに甘い味ですが、美濃吉は砂糖を入れず、しっかりとした出しの味だけで食べさせます。好き好きだと思いますが、私は断然美濃吉派。
航空公園の駅を出て、公園に入ったところ。
3分か4分ぐらいかな?
ユキヤナギ
歩道沿いの植え込みなんで軽く刈り込んであるみたい。ホントは刈り込まずに自然に伸ばした方がきれいなんですがね。
黄色いのはレンギョウ。ほぼ満開です。レンギョウも四角く刈り込んじゃってますねぇ。四谷の上智の前の土手みたいに、奔放に伸ばした方がきれいだと思うんだけど。そう言えば、花の時期にあそこの土手を通りかかったら、黒服に詰め襟の神父さん達がブルーシートの上で酒盛りやってたな。
あいにくの曇り空で桜が全然映えない。
オオイヌノフグリ(学名Veronica persica)。何とヴェロニカと同類だったのです。
これはホトケノザ。春の七草の仏の座はキク科の植物ですが、普通のホトケノザはシソ科の植物です。葉っぱが仏さんの台座みたいに見えるからなんでしょうね。
この一直線に続く窪地は明治末か大正初め頃に、日本で初めて飛行機が飛び立った滑走路の跡地だそうだ。今は芝生と花壇になっています。
自然にこうなったのか、それとも人間が仕立てたのか、ここの桜はどれも根元から枝分かれしています。
空が曇っているので、小賢しい技を繰り出さないと写真にならねぇじゃないか。
とにかく広い公園で、中にはテントを張っている家族連れもいました。ひょっとしてここで生活してる?
スミレ
お花見終了
4月か5月の新緑の頃もきっときれいだろうなと思いました。
それでもって、池袋まで戻ってから、「イェイ、花見の〆だ!」ってわけで、デパートの中に最近できた人形町今半ですき焼きを食ってしまったのですよ。贅沢三昧の一日でした。
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