新国立劇場 バレエ『シルヴィア』 ― 2012/11/01 16:36
昨日(10月31日)は久々に二国に出かけて、バレエ『シルヴィア』を見てきました。ドリーブの音楽は何となく耳にすることがありますけど、バレエはあまり上演の機会が多くない作品じゃないでしょうか。ここにムービーなど。スタッフ&キャストはこちら。
一応事前にあらすじなどは頭に入れて出かけるものですが、このストーリーはちょっとねぇって感じ。もちろん題材はギリシャ神話から取っているわけですが、アシュトン、ノイマイヤーなど振付師によってストリーはまちまち。要するに都合のいいようにいくらでも改変できるバレエのようです。今回のビントレー版は、1993年に吉田都のために振り付けたものらしい。
ところが幕を開けてみると、そのご都合主義的なストーリーがみごとにはまっているんですニャー。愛の神エロスは年老いた庭師として、グイッチオーリ伯爵(オリオン)の館で働いている。伯爵夫人(ディアナ、ギリシャ神話でアルテミス)と伯爵の中は冷め切っている。伯爵が家庭教師(シルヴィア)に手を出そうとするんで、家庭教師と召使い(アミンタ)との恋も壊れそう。老エロスは、真実の愛を取り戻すための古代への旅へと人々を誘う。といった具合に、第一幕のプロローグと第三幕の終わりに現代社会との関わりを絡めて、ビントレーは全体を二重の構造に作り替えています。文字であらすじを読むと、なんか無理やりな感じがしますが、これがなかなかよくはまっている。
第一幕はディアナ(アルテミス)やオリオンといった狩猟にまつわる人物が登場するんで、オケではホルンが大活躍。チャイコフスキーが、「このバレエを知っていたら、白鳥の湖は作曲しなかっただろう」と言ったそうですが、確かにドリーブの音楽はすばらしい。ハイヒールからトウシューズに履き替えたディアナとその取り巻きのニンフたちの踊りは、人数が多くはないのでさほど豪華には見えないんですが、観客を遠い神話の世界へと引き込みます。よく見ていると有名なディアナの入浴シーンがあったり、オリオンの石像のように見えるのが三叉の矛を持っていて、ポセイドンの息子を暗示していたりと、なかなか凝った舞台です。アミンタはディアナの矢に射られて失明。シルヴィアはアミンタを慰めようとしますが、オリオンに拉致されます。盲目のアミンタはエロスの道案内でシルヴィアを追って旅に出ます。
第二幕はオリオンの洞窟。好色な狩人オリオンがシルヴィアを誘惑しようとします。シルヴィアも嫌々ながら、話を合わせるような、まんざらでもないようなふりをします。ここのオリオンとシルヴィアの踊りもなかなかの見せ場だったんじゃないでしょうか。やがてシルヴィアは狩人にワインの作り方を教え、オリオンを酔い潰します。このワインを作る場面に登場するオリオンの2人の手下がなかなかよろしい。サンプラザ中野のようなつるっ禿げで、グラサンをしたオカマ。この2人のダンスがなかな面白うござんした。めくらのアミンタがやって来ますが、シルヴィアは逃げてしまいます。
第三幕はディアナ(アルテミス)の神殿がある海岸。となると小アジアのエペソスでしょうか? 有名なラッパのファンファーレが鳴り響き、ニンフたちがディアナを讃えて踊ります。この群舞は見応えアリ。そこに海賊船がやって来て、奴隷女を売りつけようとします。が、実は海賊の船長はエロス。積み荷の女の中にはちゃんとシルヴィアがいます。偽足をつけたコミカルな海賊の踊りはなかなか。偽足でのスピンには大喝采。アミンタが現れ、シルヴィアと結ばれるんですが、ここでの二人の踊りがこのバレエの一番の見どころでした。
シルヴィアを追ってオリオンがやって来ますが、神話の通りディアナがオリオンを一撃で倒します。その後、処女神ディアナはシルヴィアにも怒りの矛先を向けようとしますが、ここに傘をさした老エロスが登場。白髪の老紳士といった出で立ちで、遠目には「何である、アイである」っていうコマーシャルに出ていた頃の植木等にそっくり。この爺さんが「ナンチャッテ」といった感じで、一同を現実世界に連れ戻します。狩りの武器を手にしていた登場人物が、武器を収め、グイッチオーリ家の人々は真実の愛を思い出す。まあ、そんなようなワク構造がみごとにはまった舞台でした。
いやあ、本当に面白かったんで、土曜日(3日)にもう一度別キャストの日を見に行こうかな、なんて思っているところ。地味な演目なので、チケットは十分余っているみたいです。
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