1/31 エウゲニ・オネーギン@新国立劇場 ― 2024/02/01 11:48
『エフゲニー・オネーギン』、『エウゲニ・オネーギン』、『イェヴゲニー・オネーギン』、『エヴゲーニイ・オネーギン』などいろんな表記があって面倒だ。ともかく近代ロシア文学の祖とも言われるプーシキンの作。チャイコフスキーの甘美な音楽付きとなれば悪かろうはずがない。
まずこの日一番の収穫は指揮者のヴァレンティン・ウリューピン。ウクライナ出身で音楽教育はモスクワで受けたらしい。ロシア国内のオケを振っており、ペルミのムジカ・エテルナも振っているんだそうだ。そしてこの数年は西側のオケやオペラも振っているそうだ。経歴はともかく、天性のものだと思われますが、テンポ感がいい。そして哀愁を帯びたチャイコフスキーの音楽を情緒たっぷりに聞かせてくれる柔軟性を兼ね備えている。ある意味イタオペにも通じるような間のとり方をする一方で、例えば第2幕のワルツは、かなりキビキビとしたテンポで人々の浮き立つような喜ばしい感情を表現する。この指揮者、ただ者ではない。
タチヤーナは恰幅のいい人でしたが、1幕の「手紙の場」の憧れを切々と歌う可憐な乙女から、第3幕で公爵夫人として登場する感情の大きな振れ幅を見事に表現していました。妹のオリガもよかってねぇ。レンスキーは立派なテノール。ドラマティックな役どころらしいが、リリカルな側面も持ち合わせていて、第2幕でやたらとオルガに嫉妬する演技もなかなか。ちょい役ではありますが、グレーミン侯爵には度肝を抜かれました。これぞロシアのバス。バス・バリトンとか甘っちょろい歌声じゃなくて、大地の底から響いてくる歌声。第3幕の一曲だけのために呼んだんでしょうが、すごい人が来てくれたもんだ。その他、母親のラーリナ、乳母のフィリッピエヴナ、フランス人トリケに至るまで素晴らしいキャスティングだった思います。そして肝心のオネーギンですが、周りがあまりにも豪華なキャストだったのだ、ちょっと渋めだったかな。でも最後の公爵邸の場面では切々と感情を歌い上げていました。
今回は東京交響楽団がピットに入っていましたが、ロシアの憂愁を華麗に彩っておりました。そして何よりも合唱団はすごいねぇ。世界のオペラハウスでも二国の合唱団ほど訓練され、しかも演技もできるところはないんじゃないかなぁ。というわけで、一晩寝ても興奮冷めやらぬデデちゃんでございました。
オネーギンのワルツ。田舎の舞踏会ですから、格調高いポロネーズじゃなくて、庶民的なワルツです。指揮はロストロポーヴィチ。当時のボリショイオペラでは、フィシネフスカヤがタチヤーナを歌うときには、旦那のロストロポーヴィチが指揮台に上がることが多かったみたい。日本公演でもロストロポーヴィチが指揮をしていました。
オネーギンのポロネーズ。公爵邸の舞踏会ですから、ワルツじゃなくてポロネーズです。
Evghenii Oneghin Opening Act III Polonaise Bolshoi Theatre
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