10/5 ヘンデル『ジュリオ・チェーザレ』@新国立劇場 ― 2022/10/06 16:05
まあなんとも中途半端な公演でした。掲題役のシーザーを歌ったマリアンネ・ベアーテ・キーランドがあまりにも下手すぎる。音程があやふや、メリスマが音楽についていけなくて伸びたり縮んだり。刺客に取り囲まれた際にも、丁々発止と歌で切り結ぶ意気込みなんて端からないね。あそこはシーザーの一番の見せ場のはずなのに、まるで覇気がない。ビオンディの『メッセニアの神託』にも出ていたそうですが、記憶に残らない人なんだなぁ。大劇場の主役を張るにはあまりにも貧相。なんでこんな人を呼んだんだろうか。
トロメーオの藤木大地という人も、メリスマが下手だね。ダ・カーポアリアの繰り返し部分で華やかな装飾を聞かせる技量はないようだ。アキッラのヴィタリ・ユシュマノフって人は、まあまあご立派な声をしていましたが、不遇な役回りで印象を残せず。
唯一気を吐いていたのがクレオパトラの森谷真理。終幕のDa tempesuteのアリアは熱唱でした。そして最後の二重唱Caro!Bella!。これも非常に美しかった。キーランドはやっぱりプリマじゃなくてセコンダ・ドンナなんだなってしみじみわかりました。クレオパトラの下を歌っていると、天国的な調和を聞かせてくれました。なんだか『ポッペア』の最後の二重唱にも匹敵するような美しさでした。
カイロの考古学博物館の収蔵庫の中で進行する舞台は、馬鹿でかい彫刻や、時代錯誤の絵画なんかが華やかな彩りを添えていましたが、所詮はハリボテ。演出家はバレエの『くるみ割り人形』のような枠構造を全体に仕掛けたようですが、果たしてその効果は??? オケはあんなもんかな。メリハリとか、躍動感とは無縁の、レイモンド・レッパードの時代に逆戻りしたような感覚。
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