桑形亜樹子チェンバロ・リサイタル 対位法〜宇宙の摂理〜第3回2015/10/29 20:49

昨日(10月28日)は茗荷谷のラリールで桑形亜樹子のチェンバロを聞いてきました。何人入るのかな、50人とか60人ぐらい入ると一杯のホール。ここでのリサイタルは3回目ですが、いつもなんか暑かったり、雨上がりで猛烈に蒸していたり、ちょっとチェンバロにはかわいそうなコンディションの日が多い。今回も10月末なのに半袖でも汗が出るくらいの陽気。調律師さんも大変ですねぇ。

さて今回は「イタリアの光を浴びて」という副題で、主にフレスコバルディを中心としたイタリアのルネサンスから初期バロックの鍵盤音楽と、シンフォニア、フーガの技法などバッハの対位法を聞き比べるという趣向。対位法という切り口で100年から200年程の時間の流れを行ったり来たりします。

まず前半は「聖堂内に漂う気」というテーマで、どちらかというと教会音楽風の曲、あるいは宗教的な主題の曲が弾かれました。16世紀初頭のヴェネツィアの鍵盤音楽はバロックと言うよりはフランドルから流れてきた巨匠が築き上げたルネサンス音楽の最盛期。カヴァッツォーニのモテット、ジュリオ・セーニのリチェルカーレなどちょっとアルカイックな雰囲気です。言われてみれば旋律の持つ鄙びた雰囲気と、完成された精緻な対位法のコントラストがちょっと取っつきにくい気持にさせますが、音と音との対立をを厳密に規則化して音楽にする面白さは、もうすでに中世の末には完成されていたんだなぁってつくづく思い知らされます。それに続いてバッハのシンフォニア第1番と、コラールを3曲。バッハになると旋律の聴きやすさがまったく違ってきます。

再びルネサンスに戻ってカヴァッツォーニのレチェルカーダ、そして17世紀初頭のフレスコバルディのトッカータ第1集第9番。フレスコバルディになると対位法と言ってもかなり自由な走句やテンポの変化、ルネサンス的な定型を破る様々な工夫が施されます。カプリッチョ10番も対位法的であるとともに大胆なテンポの変化、リズムの変化が見られます。前半の最後にバッハのフーガの技法からコントラプンクトゥス5番。主題が反転されてリズムもちょっと工夫された曲。

リサイタルの後半は「俗世界への扉」。前半のフレスコバルディでも十分に俗世の雰囲気には満ちていたんですが、後半は主題そのものが世俗のものという感じなんでしょうか。前半と同じようにカヴァッツォーニのカンツォンで始まり、パラボスコのリチェルカーレ、バッハのシンフォニア11番と続きます。

さらにフレスコバルディの3つのガリアルダとなると楽しいダンスミュージック。ここら辺の緩急やリズム感はさすが桑形のお手の物。さらにカプリッチョ第5番。手稿譜で残されている「フィオレンツァのアリアによる変奏」という珍しい曲も演奏されました。フレスコバルディの最後はカプリッチョ第3番「カッコー」。ソプラノはソ・ミの音をひたすら繰り返し、残り3声が精緻な対位法を繰り広げます。そして演奏会の最後はフーガの技法からコントラプンクトゥス6番。付点の付いたフランス風序曲のリズムを使ったフーガですが、チェンバロのソロで実演を聞いたのは多分初めてじゃないかなぁ。いやあ、凄い曲。凄い演奏。

バッハのすごさは言わずもがな、ルネサンスや初期バロックのイタリアの鍵盤音楽ってのも面白いねぇ。イタリアものばかりだったら小振りなイタリアン・チェンバロで弾いた方が味わいがあるのかもしれませんが、バッハも含めてこれだけの時代を行ったり来たりするプログラムでは、桑形所有のカッツマン作フレミッシュ・チェンバロがその能力を遺憾なく発揮して、とても魅力的な音楽を聴かせてくれました。

最後に1月の最終回に向けた予告編として、フローベルガー作曲の「マイヤリンによる変奏曲」から主題と第2変奏、それにGrammaticaと題された半音階多用の第6変奏が演奏されました。いよいよ大詰め、楽しみになってきました。


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昨日は26℃まで上がって夏日。夜になってもホールの中はかなり蒸していました。今日は曇りがちで最高気温も20℃まで上がらなかったみたいです。

クリムゾン・グローリーが満開です。






ブルー・ムーン


シャルル・ドゴール

ブルー・ムーンもそうですが、ブルー系のバラは爽やかな香りが特徴。



ドゥフトゴルト、黄金の香り


ドゥフトヴォルケ、匂い雲

資生堂の石けんの香り

クロチルド・スーペール(粉粧楼)

小さな花がたくさん咲きます。これも香りのバラ。

こいつも資生堂の香料に使われている芳純


インカの花がたくさん開いています。