ロト指揮の都響でラモーの『優雅なインドの国々』、ルベル『四大元素』、ラヴェル『ダフニスとクロエ』(全曲)2020/02/02 21:33

今日(2月2日)はサントリーで都響を聞いてきました。指揮はグザヴィエ・ロト、曲目は掲題の通り。モダンのオケでラモーとかルベルというとちょっと抵抗がある人が多いんじゃないでしょうか。はっきり言うとこれは現代のオケのレパートリーじゃない。でもピリオド楽器の演奏でもなく、モダンのまったりとした演奏でもなく、モダンの楽器を弾きながらも指揮者の技量で面白く聞かせられるとすれば、まあたまにはこんなのもありかなといったところでしょうか。バッハ以前の音楽をモダンでやるってことについては、あくまでも指揮者の技量次第ということになります。ラモーの『優雅なインドの国々』はフランスバロック特有のスキゾなストーリーに、「優雅」な音楽がついた逸品。ロトの演奏は打ち物、つまり舞踏のリズムを強調した演奏。時に弦の響きを圧倒するパーカツの響きがホールを揺るがします。人数を絞った弦楽器は時にリズムセクションに圧倒される瞬間もありますが、それでもそこには典雅なおフランスの音楽が息づいています。

2曲目のルベルは冒頭の不協和音が何かと話題になる一曲。でもこれもモダンのオケのレパートリーとは言い難い。一瞬ウルトラ・モダンかと見せかけて、実はかなり保守的な舞曲の寄せ集め。これは都響の木管セクションが超絶的な名人芸を披露。楽しい音楽をやっていました。オーボエ、ファゴット、そして最後はヴァイオリンも起立して楽しげに歌い上げていました。

後半がラヴェルの『ダフニスとクロエ』全曲。フォーキンが振り付けたバレエの舞踏譜は残っていないんだそうで、私もバレエは見たことがありません。日本のオケでは組曲版の演奏が多いんじゃないかなと思いますが、今日は全曲版が演奏されました。それぞれ15分ずつぐらいの2つの組曲では舞台の様子は知る由もないんですが、この全曲版だとバレエの様子が何となく想像できます。たとえばダフニスの恋敵ドルコンの「グロテスクな踊り」と「ダフニスの軽快で優雅な踊り」のくっきりとした対比、「海賊の来襲」から「夜想曲」、「ニンフたちのゆったりとした神秘的な踊り」等々、見たことはないけど音楽がインスピレーションとなって頭の中で踊りの世界を想像できるような気がします。第2部冒頭のア・カペラ合唱による「間奏曲」は美しかったですねぇ。牧羊神が海賊たちを駆逐し、第3部のまたまた牧歌的世界が戻ってきます。まあ最後はめでたしメデタシでにぎやかに終わるんですが、ロトの求心力というのか、集中力というのか、音楽の中に没入していく力がすごかったですねぇ。日本ではオーケストラ曲というよりも賑やかなブラスバンドの曲ってイメージが強くて、コンクールで高校生が名人芸を聞かせるための曲のようになっていますが、オリジナルの演奏でこそ曲とバレエの本当のよさがわかるんじゃないでしょうか。日曜の演奏会ということで空席が目立ちましたが、最後は客席もかなり沸いていました。


サイモン・ラトル指揮のベルリンフィルで『ダフニスとクロエ』第2組曲