2/8ドン・パスクワーレ@新国立劇場2024/02/09 14:10

昨日(2月8日)は二国でドニゼッティの『ドン・パスクワーレ』を見てきました。あらすじ、スタッフ&キャスト、ムービーなどはこのページ。舞台写真はここ

ドニゼッティというとロッシーニ、ベッリーニと並ぶ、ベルカント・オペラの大作曲家。70あまりのオペラが知られていますが、悲劇では『ランモルメールのルチア』、『ルクレツィア・ボルジア』、『アンナ・ボレーナ』、ブッファ(喜劇)では『愛の妙薬』、『ドン・パスクワーレ』、『連隊の娘』など悲喜劇ともに名作が残っています。二国のステージでは『ランモルメールのルチア』、『愛の妙薬』、そして『ドン・パスクワーレ』が上演されています。ブッファというのは16世紀以降のイタリアで流行ったコメディア・デラルテのオペラ版とも言える様式で、例えばモーツァルトの『ドン・ジョヴァンニ』におけるレポレッロのような、一種の道化が物語の狂言回しになる喜劇。ドン・パスクワーレでは掲題役のドン・パスクワーレ本人がブッファと呼ばれる役柄になります。大抵はバスあるいはバリトンの役柄で、早口言葉のようなテンポの早い歌いまわしと滑稽な仕草が特徴です。

情緒纏綿たるチェロの独奏からテンポが速くなって、ロッシーニ・クレッシェンドほどではないにしても、ワクワク・ドキドキが止まらなくなるような序曲が終わってまず盛大な拍手。1曲毎に拍手をもらえるってのも、ブッファの特徴ですねぇ。この日ドン・パスクワーレを歌ったミケーレ・ペルトゥージは、ブッファの役にピッタリの口がよく回るバス。気持ちのいい歌いまわしと仕草で喝采を浴びていました。医者のマラテスタを歌った上江隼人もペトゥルージに負けず劣らずの芸達者。最初こそ若干不安定なところがありましたが、第3幕のパスクワーレのとの二重唱では丁々発止の楽しさ。早口言葉も機関銃のように回って楽しいことこの上なし。リゴレットやジェルモンなどシリアスな役もこなすんだそうで、なかなか芸達者な一面を見せてくれました。エルネストのファン・フランシスコ・ガテルというテノールは明るく柔らかな声で、ひ弱な居候といった役どころを好演。この日一番の拍手を浴びたのはノリーナを歌ったラヴィニア・ビーニというソプラノ。明るくて切れ味抜群、表情も仕草も堂に入って、結婚前のコケティッシュな娘から、パスクワーレとの婚姻証書に署名した途端に、湯水の如く浪費を始めるマダムに変貌する切り替えの見事なこと。

この日も二国の合唱は迫力満点。東響も楽しい雰囲気は出していましたが、ただ一点あのトランペットは何だぁ。安っぽいメロドラマ風な音色はいいんだが、ひっくり返っちゃいかんぜよ。指揮者は普段のオペラと同じく、目立たないのが職人芸かも。

このプロダクション、2回目の上演ですが、装置や衣装など毎回楽しませてもらっています。最近漫画家とテレビドラマの脚本家の確執が取り沙汰されていますが、オペラの演出も過剰に自己主張する演出は2度目の上演はないぞと覚悟してもらいたいものです。

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雪はすっかり溶けました。


雪の上に撒いた粉炭が黒く残っています。


パパメイアンの蕾。この先暖かい日が続くんだそうで、なんとなく開きそう。




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