12.13 ベルリオーズ『ファウストの劫罰』@東京芸術劇場2025/12/13 21:44

今日(12月13日)は池袋の芸術劇場でベルリオーズ作曲の『ファウストの劫罰』を聞いてきました。スタッフ&キャストはこちらのページを参照。めったに演奏される曲じゃないし、1度ぐらいは聞いてみるかって感じで出かけましたが、お客さんはざっと見渡して6割程度の入り。

ゲーテの『ファウスト』とはかなり内容が異なっています。まずファウストの第2部にあたるギリシャ神話の世界やオランダの干拓工事などはまるで描かれず、第1部のグレートヒェンとの絡みだけが描かれます。これはファウストを題材にしたグノーのオペラも全く同じで、第2部は取り上げられていません。(グノーの『ファウスト』はこんな音楽。第2幕の居酒屋のワルツ。第4幕の兵士の合唱。)ベルリオーズの幕開きはハンガリー。えっ? ここでファウストは虚無感に苛まれます。やがて兵士たちの行進がデーハーに響き渡ります。 舞台上やホール左右の壁面には軍靴の響き、オリンピックの熱狂等々の全体主義的なプロジェクションマッピングのイメージが投影されます。なぜハンガリーなのかなぁ。ラコッツィ行進曲が好きだったんだろうけど、イマイチ意味がよくわからない。リストもラコッツィ・マーチは『ハンガリー狂詩曲15番』とかいろんなところで使いまわしています。あと『メフィスト・ワルツ』の第一番、村の居酒屋にてとか、なんかそんなのもあったねぇ。

『ファウストの劫罰』第2部はやっと北ドイツのファウスト博士の書斎に。世を儚んで自殺しようとしますが、そこに颯爽とメフィストフェレスが登場。人生の喜びを取り戻してやるぞと契約をかわし、アウエルバッハの酒場に連れ出します。学生のブランデルが毒を盛られて駆け回る『ネズミの歌』を歌うと、神を嘲るかのように学生たちが『アーメン・フーガ』の大合唱で盛り上げます。それに対してメフィストは『蚤の歌』を返します。これはムソルグスキーの有名な『蚤の歌』の元になっています。プロジェクションマッピングは、携帯の画面からLineのチャットが無数に流れていく様子を映し出します。ファウストはこんな喧騒はまっぴらとばかりに、酒場を抜け出しエルベ川のほとりでまどろむうちに、マルグリート(グレートヒェン)の夢を見て本当に会いたいと願うようになります。

第3部はマルグリートの部屋に忍び込むファウストとメフィスト。カーテンの影に隠れて様子を伺っていると、マルグリートが『トゥーレの王』を歌います。「昔トゥーレに王がいた。愛したひとは妃だけ…」の有名な歌い出し。メフィストはというと、精霊たちを召喚して『鬼火のメヌエット』を踊らせます。そして美男子に華麗なる変身を遂げたファウスト博士は、マルグリートと愛を語らいます。マルグリートもファウストを夢の中で見たんだそうだ。そんな逢瀬もほんの束の間。マルグリートが男を引っ張り込んでいると近所の噂になり、母親がやってくるというわけで、ファウストはスタコラサッサと逃げ出します。

第4部は糸車を回しながらマルグリートが歌う『ロマンス』から始まります。一方ファウストはマルグリートとはとんとご無沙汰で、急に目覚めたかのように『自然への祈り』なんて呑気なアリアを歌い上げます。そこにメフィストが現れ、ファウストが逢瀬を母親に邪魔されないようにとマルグリートに与えた睡眠薬を、母親に過剰に摂取させて殺してしまった。マルグリートは捉えられ翌日には死刑になると告げる。ここらへんは原作ではまずは道徳的な罪としての密通。そして生まれた嬰児の殺人。それから母親殺し。まあこんな罪なんですが、『劫罰』では母親殺しが主たる罪状のようです。マルグリートを助けるために、「メフィストに仕える」という契約に署名したファウストは、マルグリートに会うためにメフィストとともに馬を走らせる。プロジェクションマッピングの映像では、東京のビル街が後ろへ後ろへと猛烈な速さで流れていきます。そして行き着いた先は渋谷のスクランブル交差点。それは嘘で、行き着いた先は正真正銘の地獄、なんだと思う。プロジェクションマッピングの活躍の場のはずなのに、何故か地獄の情景は映し出されない。場面は変わって、地上では無伴奏合唱で地獄の有り様が改めて確認され、最後は天上の世界に移り、マルグリートの無垢な魂が天国へと迎え入れられる。

ファウストの宮里直樹という人がなかなか結構でございました。それに対してメフィストフェレスの北川辰彦っていう人はちょっと軽かったかな。まあ、狂言回し的な存在でもあるから、そういう役作りをしたのかもしてないけど、声のハリとかツヤはまあイマイチ。マルグリートの小泉詠子もちょっと小粒。バカでかいオーケストラのなかでは、ちょっと埋もれがちだったかな。ブランデルは1曲だけだったし、印象には残ってないですねぇ。フランスのマキシム・パスカルという指揮者、そつなくオケをな鳴らしておりました。二期会の合唱は流石にプロの合唱団です。二国のコーチをやっていた三澤洋史が二期会でもトレーナーをやっているみたいですね。それから最後に登場し天国の場面を歌ったNHKの児童合唱団、これもまさに天国的な響きがしておりました。大編成の読響はほぼ完璧に鳴っていたと思います。いやあ、面白かったですよ。演出の人、プロジェクションマッピングもやってたのかな(?)、これはいなくてもよかったな。よくもまあカーテンコールに顔出ししたねぇ。

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