エイフマン・バレエ 『ロダン』 7/18 ― 2019/07/19 11:41
昨日〔7月18日)は上野の文化会館でエイフマン・バレエの初日『ロダン』を見てきました。振付師ボリス・エイフマンが主催するバレエ団は1990年代に5回来日公演を行っていますが、それ以降ほぼ20年振りの日本公演だそうです。(その間に2回二国で日本人ダンサーが出演する『アンナ・カレーニナ』が上演されています。)すでに琵琶湖と静岡で公演を打ってから満を持しての東京の初日。文化会館の客席は先週の『トゥーランドット』同様、テレビカメラがたくさん入っていましたが、お客さんも座席の9割ぐらいは入っていたみたい。キャストや写真、動画などはこちら。
『ロダン』はもちろん、彫刻家のロダンとその愛人であり弟子であったカミーユ・クローデル、そしてロダンの内縁の妻ローズの三角関係を軸に展開します。ただし時間軸はリニアじゃなくて、登場人物の現在と過去を目まぐるしく行ったり来たりします。大抵は回想シーンですが、時に観客にエピソードを思い出させるかのように意図的に時間が飛ぶこともあります。まあ説明的ではありますが、回想シーンがなかなか面白かったりもします。モダン・バレエなんでしょうが、視覚的な娯楽性もてんこ盛り。ロダンの元を去ったカミーユが享楽的な生活に溺れている場面で、ムーラン・ルージュのカンカンが踊られるんですが、鍛え抜かれたダンサーたちが舞台狭しと踊りまくるわけで、もちろんモンマルトルのキャバレーよりも遙かに見応えのあるシーンになっていました。またローズと出会った葡萄の収穫祭(?)のような場面でも、農民の素朴なエネルギーの爆発がみごとに表現されていたんじゃないでしょうか。
クラシックあるいはロマンティック・バレエの特徴は、ジャンプにしろリフトにしろ、人間の重さを感じさせないというところにあるんじゃないかと思います。エイフマン・バレエは正反対の踊りを見せてくれます。ダンサーは常に重力に支配されていて、それに抗い重力を必死に振り払おうとするかのように踊ります。たぶん普通のクラシック・バレエのダンサーがエイフマンの振り付けを踊ると、普段使わない筋肉が悲鳴を上げるんじゃないでしょうか。『ロダン』の中では時にダンサーが粘土の塊のようになります。重そうな塊にロダンやカミーユが手を突っ込み、ねじったり捻ったりしていると、どこかで見たような彫刻が出来上がってきます。手足、胴体、首に至るまで人間の自然な仕草ではあり得ないような向きに捻り上げられ、こねくり回されますが、作品の製作過程を見ているようでこれもなかなか興味深いものがありました。
時間軸を行ったり来たりしながら、男女の三角関係と、ロダンとカミーユの芸術上の葛藤を表現して見せてくれた2時間でした。ロダンてぇのは最低な男だってのが結論かな。ただ、有名な三角関係ではありますが、個々のエピソードについては必ずしも観客が熟知しているわけでもなく、全体をつなげる求心力がちょっと乏しいのかなという気もしました。
主なキャストは
ロダン;オレグ・ガブィシェフ
カミーユ:リュボーフィ・アンドレーエワ
ローズ:リリア・リシュク
ロダンとカミーユのダンサーは初演の時にも踊った人だそうです。
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バレエの前に文化会館の向かいにある西洋美術館をちょっと覗いて、ロダンの彫刻をいくつか見てきました。いつからかは覚えていませんが、西洋美術館の前庭は無料開放されていて、誰でも自由に入れるようになっています。バレエの中でも描写された彫刻を含めていくつか。
カレーの市民
アダム
エファ
地獄の門
地獄の門の上部にいる人物に注目
そう有名なこのお方。かなり不自然な姿勢です。
おまけ、ブールデルの弓を引くヘラクレス
上野公園を横切って池之端までぶらぶらしてみました。
不忍池では蓮の花がちょこっと咲いていました。
望遠レンズの試し撮り
ちょと寂しい
弁天堂
べべんべ〜ん、「祇園精舎の鐘の声…」
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