第5回読響メトロポリタン・シリーズ シューマンのピアノコンチェルト、ラヴェルのスペイン狂詩曲 etc.2014/01/10 19:50

昨日(1月9日)は池袋の芸術劇場で読響を聞いてきました。サントリーもオペラシティも音がイマイチというわけで、読響は池袋で月2回のコンサートをやっていくみたいです。

指揮者はシルヴァン・カンブルランという人。なかなかレパートリーが広い人みたいで、この日のプログラムもなかなか凝ったものでした。まずシューマンの「マンフレッド序曲」。あまり聞いたことのない曲ですが、形式よりも内容を重視するシューマンらしく、モコモコっとして捉えどころのない感情の移ろいを表現した音楽なんでしょう。読響の響きがこのロマンティックな音楽にぴったり。とりとめのない悲しみや苦悩を美しく歌い上げていたと思います。

2曲目がソリストにロジェ・ムラロを迎えて、シューマンのピアノコンチェルト。マンフレッドよりは前に書かれていて、私が思うには幸福の絶頂期のシューマンの音楽じゃないかと。クララとの結婚をクララの父親のヴィークが認めてくれたころの音楽。このピアノコンチェルトはCDでも名演が少ないので有名ですが、まして実演となるとまず良かったなぁっていう演奏に出会ったことがありません。ピアノがいいとオケがダメだったり、指揮者がぬるかったりして、なかなか難しい。ムラロっていうピアノ弾きはなかなかのテクニシャンと見ました。それから芸術劇場のシュタインウェイが名器。音色の美しさは堪能しました。オケも指揮者も良かった。第二楽章の叙情。第三楽章の複雑なリズム。どこを取り出しても第一級のシューマンだったと思います。ただピアノが・・・すごくうまい人なんだけど、ちょっと食い足りないところがあったとすれば、第三楽章かな。幸せたっぷりなシューマンというよりは、ちょっと老成しちゃったロマンチストっていう雰囲気。もっと若々しくテンポにしろリズムにしろ縦横無尽に弾いも良かったんじゃないかな。というわけで、今でもこの曲の最高の名演はこれ。(リパッティ&カラヤン)

(なおアンコールに、ショパンの有名な嬰ハ短調のノクターンが演奏されました。)



後半はラヴェルを2曲。まず高雅で感傷的なワルツ。ラ・ヴァルスとともにラヴェルの代表的なワルツ。読響の響きがここでは一変して、繊細かつダイナミックで、きらめくような色彩をもった音の洪水を紡ぎ出してくれました。それに続いてスペイン狂詩曲。華やかな民族色を鮮やかに描き出した名演。そしてアンコールにカルメン前奏曲。いやあ、正月らしい肩の凝らない気軽で楽しい名曲コンサートでした。