邦楽で聴く義経伝説@国立能楽堂2025/05/17 20:45

今日(5月17日)は、雨の中千駄ヶ谷の国立能楽堂で各流派入り混じっての義経に関する音楽を聞いてきました。土曜とはいえ12痔開演てどうよ。昼間の12時に音楽を聞く態勢になるかぁ? それはともかく、北参道から国立能楽堂へ。この手の企画モノは通常だったら隼町の国立劇場の小劇場でやっていたような気がしますが、今は国立劇場のゴタゴタに巻き込まれて、企画物もさまよえるオランダ人。ともあれ久しぶりに幻冬舎の横を通って国立能楽堂に来てみたら 5月の能楽堂は在原業平生誕1200年記念と銘打って、『井筒』やら『杜若(かきつばた)』やら、なかなかおもしろそうな演目が並んでいました。杜若は歌の句の先頭に「かきつばた」を詠み込んで作った恋物語のお話。

らころもつつなれにしましあれば
るばる来ぬるびをしぞ思ふ

伊勢物語第九段「東下り」です。しかしまあ「昔男」の業平さんが生誕1200年を寿がれているとは、お釈迦様でも気がつくまい。

今日聞いたのはこんな出し物。さらに細かい解説だとこんなページもあります

常磐津の『宗清』は牛若がまだ乳飲み子だった頃のお話。父親源義朝が戦に敗れ、常盤御前が今若、乙若、牛若を連れて必死の思いで都落ちをしようとします。平家に見つかれば男の子供は命が無い。伏見近くの小幡の関に待ち構える平宗清。関所には「松をを手折って松を助く」という清盛による高札が掲げられています。絶世の美女と言われた常盤御前はやむを得ず正体を明かしますが、宗清は一度抜いた氷の刃を収め、母子を六波羅に送ります。つまり、清盛の高札は「俺の妾になれ」という謎掛け。この緊迫した場面を情緒纏綿たる語りで聞かせてくれました。常磐津ってひょとして常盤御前から来ているの? そんなこたぁないか。実は宗清という人物、歌舞伎や文楽の『熊谷陣屋』の中では弥陀六という名前で登場して、「あの時、こなたを見逃さずば今、平家の立て籠もる鉄拐が峰、鵯越を攻め落とす大将は、あるまいもの・・。まった池殿と云い合わせ 頼朝を助けずば 平家は今に栄んものを・・・。この宗清が一生の不覚!」と嘆いています。

2曲目はお馴染み『橋弁慶』。今日は長唄で、五条大橋で牛若丸と弁慶が運命の出会いをする場面。長唄はいろいろな流派の音楽をかなり柔軟に取り入れているんですが、その中でも大薩摩節という曲調がこの『橋弁慶』では大活躍。この日は細棹の三味線が三丁出ていましたが、太棹の津軽三味線ばりの大立ち回りを、迫力満点の曲弾きで堪能させてくれました。演目としては能の橋弁慶をほぼ踏襲した筋立て。


後半はまず清元の『吉野山』。歌舞伎とか文楽では『道行初音旅』という『義経千本桜』の一幕になります。静御前は愛する義経と離れ離れになって、伏見稲荷から吉野山に向かいます。義経に託された「初音の鼓」を抱えていますが、この鼓はクヮンムテンノー(桓武天皇=狐語)の治世に、夫婦の狐を殺して皮を剥し鼓に設えられたもの。そしてその狐の子どもが、静御前の従者である佐藤忠信に化けて静に付き従っています。子狐といえども400歳ちかいですね。見渡せば春爛漫、一目千本の桜、まさに義経千本桜の雰囲気満点です。静と忠信の二人も手の舞い足の踏どころを知らずといったウキウキの気分。清元の浄瑠璃は、声色をいろいろ使い分けて面白い歌いまわしでした。静御前を語った人は裏声て1オクターブ高い歌声で歌っていましたねぇ。三味線もなかなか手の込んだ合いの手で面白かった。

ちなみに文楽だと吉野山の続き四の切の場面では狐が大活躍します。




さて最後の筑前琵琶ですが、これはちょっと期待外れ。というか筑前琵琶ってものがどんなものか全然知らずに聞きに行った私が悪いんですが、よく聞く平曲(平家琵琶)とか薩摩琵琶の系統の音楽とは全くの別物。なんと言ったらいいのか、まあ四畳半向きの、お座敷音楽とでも表現すればわかってもらえるかなぁ。まず琵琶の迫力がない。トレモロを使わずに単弦で爪弾いたマンドリンようなかそけき金属音。歌はちょっと艶っぽい端唄のような感じかな。これはちょっとこの日の演目中では際立って異色の音楽でした。


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