文楽『義経千本桜』、『新版歌祭文』、『曽根崎心中』@所沢ミューズ ― 2026/03/08 11:51
昨日(3月7日)は所沢で人形浄瑠璃を見てきました。昼の部開幕はこの時期にふさわしい、『義経千本桜』から「道行初音旅」。狐の忠信と静御前の華麗な道中でございます。物語と言うよりはダンスですね。折から桜満開の吉野でひと踊り。心ウキウキ、手の舞いもおのずと足の踏みどころを知らずといった、楽しい道行きでした。
次に「〽野崎参りは、屋形船で参ろう」でお馴染み、お染、久松の『新版歌祭文』 野崎村の段。大坂の油屋に奉公する久松と、油屋の娘お染との道ならぬ恋。野崎村に戻ってくると、育ての親久作が義理の娘おみつと無理やり祝言を挙げさせようとします。折から正月が近づいていて、まな板の上に大根を乗せ、おみつが包丁を手にして、膾に切り分ける仕草を見せるなど、人形だからこその細かな動きが面白い。そこに久松を追ってお染も登場。田舎娘のおみつは都会の娘お染に圧倒され、お染・久松の思いの深さに負けを悟ります。いよいよ祝言。おみつの角隠しの下は、髪を切って短髪になっています。つまり出家する意思を固めたということ。そしてお染は屋形船で、久松は駕籠に乗って大坂に戻っていきます。最後に屋形船の船頭が、川に落ちたり、竿が引っかかったりと、コミカルな演技を見せてくれました。ただ、舞台はここまでですが、二人の恋の行方は、悲劇に終わります。心中ではないんですが、大晦日の夜に、二人はそれぞれに命を断つことになります。
夜の部は『曽根崎心中』。映画『国宝』でも散々出てきましたから、ストーリーはほどほどに。「天満屋の段」でお初が腰掛ける、その縁の下に徳兵衛がいて、お初の足先と、徳兵衛の手と顔で対話する場面。「この上は徳様も、死なねばならぬ品なるが、ハテ、死ぬる覚悟が聞きたい」と足で問えば、下にはうなづき、足首取って喉笛撫で、『自害する』とぞ知らせける」、この場面は秀逸でした。普通人形浄瑠璃の女の人形は足がついていないんですが、お初のこの場面だけは、足がないと始まらない。徳兵衛の人形遣いは人間国宝の吉田和生でしたが、普通3人で遣うところを、狭い縁の下ですから、吉田が一人で遣っていました。基本的に右手と頭だけの場面ですからこういったことが可能なんですねぇ。
大詰めの「天神森の段」。「この世の名残、夜も名残。死にに行く身をたとふれば、あだしが原の道の霜。一足ごとに消えて行く夢の夢こそあわれなれ。あれ数ふれば暁の、七つの時が六つ鳴りて、残る一つが今生の、鐘の響きの聞き納め、寂滅為楽と響くなり」。ここで、お寺の鐘がゴーンと響き渡ります。こりゃもうたまらん名調子。「北斗は冴えて影うつる、星の妹背の天の川」。薄暗い天神森の梢高く、北斗星が輝いて見えます。と、そこに光り輝く人魂が2つ。「オ、あれこそは人魂よ。あはれ悲しや今見しは、二つ連れ飛ぶ人魂よ。まさしうそなたとわしの魂」。「そんなら二人の魂か。はやお互ひは死にし身か。死んでも二人は」『一緒ぞ』と、抱き寄せ、肌を寄せ、この世の名残ぞあはれなる」。そして最後、女は目を閉ぢ悪びれず、「はよう殺して、はよう殺して」と覚悟の顔の美しさ。哀れを誘う晨朝の、寺の念仏の切回向。「南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏」。
『南無阿弥陀仏』を迎へにて、哀れこの世の暇乞い
長き夢路を曽根崎の
森の雫と散りにけり
段取りが悪い神父の計略にまんまと引っかかってしまったシェイクスピアの『ロミオとジュリエット』より、近松は遥かに才能豊かだったと思います。お初・徳兵衛の心中からわずか1か月で、台本を書いて上演にまでこぎつけたというから驚きです。
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今日は快晴ですが北風が強く吹いている上に、気温も10℃前後までしか上がっていません。
サザンカの狂い咲き。
いつの間にやらつるバラの葉っぱがかなり展開しています。
快晴
ヴェロニカ
コメント
_ おこちゃん ― 2026/03/10 19:42
_ デデ ― 2026/03/14 11:39
「まつのき小唄」と同じ年にヒットしたのが「お座敷小唄」。マヒナスターズの和田弘が広島のスナックで客とホステスが歌っているのを聞いて採譜。原曲は赤線の歌だったとか。それをやんわりと手直しして、「京都先斗町に降る雪も」とか「泣いて別れた河原町」なんて舞台も上品にして、でも「好きで好きで大好きで、死ぬほど好きなお方でも。妻という字にゃ勝てやせぬ」なんて男女の情はちゃんと残して、うまく編曲したもんですね。
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なるほどそうですか。ストーリーは全然知りませんでした。そういう結末だったんですね。
ま、我が家でこれを歌わない方がいい、という理由は他にあって、ふざけているように見えたんでしょうね。(旧姓)
あ、そうそう。あともう一曲ありましたよ。
あのイントロから始まって、「松の木ばかりがまつじゃない~♪」
あれを歌うと、嫌がられましたね。
確かに子どものが歌う歌ではないか。(笑)
あ、すみませんm(__)m 文楽とは全く関係のないこコメントでした。
失礼しました。