トスカ@新国立劇場2024/07/20 11:55

昨日は二国でトスカを見てきました。スタッフ&キャスト、あらすじなどはこちら。舞台写真はここ

指揮者ってどちらかと言うと交通整理の係りかなって気がしていたけど、とんでもない今回の上演はマウリツィオ・ベニーニという指揮者が主役だったみたい。経歴を見ると、オペラハウスでしかもイタオペばっかり振っている人らしい。去年のリゴレットも振ったらしいけど、その時にはあまり印象に残っていない。と言うよりはあのプロダクションは演出がかなり酷かったんで(その前のプロダクションよりはましという程度)、指揮者云々という話にはならなかったんだと思う。冒頭の不協和音の凄まじさ。トロンボーン、ホルン、打楽器群が唸りを上げる。第一幕のラスト、テ・デウムのシーンではほとんど歩みを止めるかのように迫力満点の合唱が響き渡る。かと思うと第二幕の「歌に生き、愛に生き」から「これがトスカの接吻よ」まで息をつかせぬ音の運び、スカルピアの動機にはワーグナーよりもワーグナーらしい不気味さが漂っていました。第三幕の「星は光ぬ」のクラリネットの音色は絶妙でしたね。

さて、掲題役のジョイス・エル=コーリーは1幕目はちょっと緊張していたのかヴィブラートが強めでしたが、肝心の2幕目以降伸びのある歌声になってきました。その立ち姿の艶やかさも相俟ってなかなかの喝采を浴びていました。しかしこの日の主役は何と言ってもカヴァラドッシのテオドール・イリンカイ。実は二国では『トゥーランドット』のカラフを歌った人です。その時にもスピントの効いた素晴らしいテノールと見受けましたが、この日のカヴァラドッシ役も美声を響かせました。スカルピアは青山貴という人が代役で歌いましたが、やっぱりまあ立派な声ではありますが、悪の仕草が何となくハマっていない感じ。19世紀のナポレオン時代のお話ですが、21世紀の世の中になっても、日本はもちろんのこと、イスラエルやロシア、そしてアメリカにもこんな不条理な悪がはびこっている、そんな人ごとじゃない危機感を感じさせてくれるスカルピア像を期待したんですが…この日も二国の合唱団は凄まじい迫力でした。アンジェロッティの妻屋秀和、堂守の志村文彦はなかなかの好演。