クリスチャン・ツィメルマン@所沢ミューズ2023/12/17 11:43

昨日(12月16日)は所沢でツィメルマンを聞いてきました。 30数年ぶりでしょうか。弱冠18歳でショパンコンクールで優勝したのが1975年だそうですから、それから10年後ぐらい。確かサントリーがオープンした頃だったと思います。うまいんだけど氷のように冷たい音楽で、もう二度と聞きたくないピアニストだったんですが、それから幾星霜、60代の後半になってどんなピアノ弾きになったのか若干の興味を持って所沢に向かいました。

プログラム前半はショパンのノクターンを4曲。それにソナタの第2番。有名な変ホ長調のノクターンを引き始めた途端にその音色に引き込まれました。暖かい。ほっかほか。基本的にルバートは最小限でインテンポの人ですが、微妙なテンポのゆらぎが心地よい。30数年前とはまるで別人のような音楽です。「葬送」ソナタは第1楽章から悠揚迫らぬテンポ。スケルツォの叩きつけるような激しいリズムも、ショパンの持つ叙情性を決して蔑ろにしない。葬送行進曲も納得のテンポ。遅すぎるわけでもなく、葬列が静かに進んでいく。フィナーレの墓場に吹きすさぶ嵐のような情景でさえ、ただ速いだけではなく人間の生理に叶う速さ。30数年前のこれ見よがしの演奏とはガラッと変わっておりました。

後半はまずドビュッシーの『版画』。ペンタトニックを使った「パゴダ」の印象的な音色。「グラナダの夕べ」のゆったりとしたラテンリズム。「雨の庭」は雨だれじゃなくて篠突く雨って感じ。3曲のどこをとっても美しくない瞬間がない。磨き抜かれた音色と、悠揚迫らぬテンポのゆらぎが心地よい。次にシマノフスキの『ポーランド民謡の主題による変奏曲』。もちろん初めて聞く曲ですが、超絶技巧の限りを尽くしたと言ったらなんですが、実にヴァラエティーに富んだ変奏。特に印象に残ったのが第8変奏。ショパンの「葬送」でも聞かせた、大伽藍に響き渡る鐘の音が、ショパンの何倍ものスケールでホール中に響き渡っておりました。フィナーレの第10変奏はフーガのような対位法的部分が印象的。そして長大なコーダで幕を下ろす。

いやあ、数十年ぶりにツィメルマンを聞いて、その大いなる変貌に唖然としました。霜置く髪も伊達じゃないね。東京にも家を持っているんだそうだから、もっと演奏会を開いてもらいたいものだ。


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サザンカの生け垣


ドウダンツツジ


寒椿も咲き始めました。