インバル指揮の都響でブルックナーの4番2022/12/15 16:04

昨日(12月14日)は池袋の芸術劇場で、ブルックナーの4番『ロマンティッシェ』を聞いてきました。指揮はインバル、オーケストラは都響。現在86歳になるインバルの初来日は1990年だそうで、今から32年前ですね。まだアラフィフの頃。この時はモーツァルトがとんでもなくつまらなくて、逆にショスタコーヴィチは重厚な音色を都響から引き出し、すごい指揮者だけど得手不得手がはっきりした人かなって印象でした。その後マーラーばかりやるようになって、次第に聞かなくなってしまった指揮者の一人でもあります。

久々にブルックナーを振るってことで、ちょっと楽しみに出かけました。結論から言うと、いやあこれを聞くことができてホントに良かったなぁ。第1楽章、ホルンの信号音のような音形から弦のトレモロ、やがてフルートに最初の音形が出てくるあたり、深いドイツの森の地の底から沸き上がってくる生命の息吹のような、根源的なエネルギーのほとばしる様子が見えてきました。第2楽章、チェロのゆったりとしたメロディーがやがて管楽器に引き継がれ、ホルンの信号音形が現れてオクターブでリレーされていく。原始の大地がやがて形あるものに形成されていく過程のような雄大な音楽をやっていました。

第3楽章スケルツォは普段聞く78/80稿とは全く異なる音楽でした。


普段演奏される78/80稿の勇壮なホルンの音形のほうが好きかな。第1稿のホルンの物悲しい音色から燃え上がるようにオケの大音響が轟渡る様子もなかなかのものですが、どうしても78/80稿のホルンの信号音からトランペット、ティンパニ、トロンボーンと受け継がれるブラスアンサンブルの迫力のほうがエネルギーの発散という点で優れているのではないだろうか。ブルックナーという人、とにかく自信がなくて人の意見をどんどん取り入れたり、お弟子さんまで師匠の音楽を改ざんしたりと、本人の音楽が跡形もなくなっていくんですが、それでも改訂版がいい場合もあるようだ。さて第4楽章もホルンに始まりやがてブラスの圧倒的な音圧、ほとんど暴力的なまでに音の洪水となって聞き手に迫ってきます。都響のブラスもこの指揮によく応えてクライマックスを形成しておりました。8本のベースの迫力もすごかったねぇ。凄まじい緊張感のなかでホルンはよく頑張っていました。ブラスアンサンブルの底力もさすが。そして木管の音色の美しさ。素晴らしい演奏会でした。なお前半にはウェーベルンの『管弦楽のための6つの小品』が演奏されました。