ヴェルディ『椿姫』@新国立劇場 ― 2026/04/10 21:12
えーと、まずもって主役の椿姫(ヴィオレッタ)が良かったですねぁ。序曲でヴィオレッタの行く末を暗示するテーマが流れてくるんですが、これが物語のすべてを指し示しているとも言えます。このオペラ、まずヴィオレッタのサロンでのパーティーでいきなり「乾杯の歌」、そして「花から花へ」と矢継ぎ早に超絶技巧のコロラトゥーラが披露されます。この演出では第2幕の前半、パリ郊外の家の場面(第2幕第1場)までを1幕からつなげて上演しますが、アルフレードの不在の間に、ジョルジョ・ジェルモンとの間に交わされる心理劇もなかなか見事。ヴィオレッタが出かけた後の、ジェルモンの「プロヴァンスの海と陸」もなかなか聞かせてくれました。
フローラの夜会で、ヴィオレッタとアルフレードの乖離が決定的になりますが、それでもヴィオレッタはアルフレードを非難するわけでもなく、真実の愛を示してくれたアルフレードに未練を残しているのかな? 原作では第3幕にあたる謝肉祭のパリが第2幕の後半。第1幕から登場していて、パーティーのお立ち台になったり、トランプのテーブルになったりしていたエラールのやや古風なピアノが、ヴィオレッタの死の床になります。しかもピアノの後ろには紗幕が引かれて、黎明境を異にする象徴になっています。駆けつけてくるアルフレードもジェルモンも紗幕の向こうで歌い、紗幕の客席側にはヴィオレッタただ一人。ここらへんのヴァンサン・プサールの演出の冴えは、今更ながら素晴らしい。「さようなら過ぎ去った日々よ」、「パリを離れて」、「受け取ってこれが私の絵姿よ」この3つのアリアのしっとりとした歌いまわしは絶妙。椿姫って超絶技巧のコロラトゥーラから、リリックなアリアまで様々な歌を歌わなくちゃならない、大変な役どころですねぇ。
出だしのコロラトゥーラはちょっと危なっかしかったけど、後半のしっとり系のアリアは聞かせてくれました。スピンとの効いたソプラノなんですが、リリックもいけるねぇ。アルフレードはホントにおバカさんです。しかも筋金入りの馬鹿。田舎の金持ちのボンボンで、パリに出てきて娼婦に一目惚れ。だけど一途な恋って、惚れられたヴィオレッタにしても悪くはない。
新国立劇場の合唱団は相変わらずうまいなぁ。ピットに入っていた東フィルも、涙ちょちょぎれのヴェルディ節を奏でてくれました。指揮のレオ・フセインというイギリス人らしき人も、よく歌う音楽でした。
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