文楽@所沢ミューズ2025/03/10 16:39

昨日(3月9日)は所沢まで出かけて文楽を見てきました。国立劇場の取り壊しが決まって、しかも再建の見通しが不明のまま、文楽座はさまよえるオランダ人さながらに放浪しております。東京公演はわけわからんホールを転々として興行を打っているらしいんですが、だからこそ年に1回やってくる所沢の公演もなかなか捨てがたい。

さて演目は昼の部が『二人三番叟』、『絵本太功記』から「夕顔棚の段」と「尼崎の段」。夜の部は『近頃河原の達引』から「四条河原の段」と「堀川猿回しの段」。

二人三番叟は能の『翁』の式三番叟を簡略化して、三番叟(老人)の舞を独立させたもの。五穀豊穣を祈願して、「手の舞い足の踏むところを知らず」といったトランス状態になるまで踊り狂う。多分天皇制の起源から生まれた、結構古い舞にルーツを持つんじゃないかな。二人の舞手がときにシンクロし、ときに疲れ果て汗を拭きつつ踊り狂う様は、ちょっとタランチュラの解毒のための踊りを彷彿とさせます。『絵本太功記』は信長を討った光秀の最後の13日間を一日一段ずつ描いた芝居で、その十段目が「夕顔棚の段」と「尼崎の段」。光秀の母親、妻、息子の三世代が謀反人光秀を巡ってそれぞれの感情の機微を吐露する場面です。更に旅の僧と偽った真柴久吉(羽柴秀吉)が一夜の宿を求めてやってくる。老婆から風呂を勧められた僧ですが、光秀が湯殿の襖越しに竹槍を突き立てるとうめき声を上げて出てきたのは老婆。光秀は母親の殺人(未遂)まで起こしてしまった。そこに息子の十次郎が瀕死の状態で逃げてくる。実は十次郎と許嫁初菊は老婆の発案でその場で祝言をあげて出陣したんだが、すでに事切れる寸前。あたりが騒がしくなり、旅の僧(秀吉)は光秀と後日の決戦(山崎の合戦)を約して別れる。人形浄瑠璃は人情の機微を描くのに実に細やかな語りと人形使いの技を駆使しております。

夜の部『近頃河原の達引』はお馴染みの心中物。井筒屋の息子伝兵衛と祇園の遊女おしゅんは深い仲。しかし伊勢亀山藩勘定役の官左衛門がおしゅんに横恋慕。急用といわれて官左衛門の屋敷に駆けつける伝兵衛。伝兵衛の籠に斬りつける官左衛門。茶入れを取り戻したいために平身低頭しますが、ついに堪忍袋の緒が切れて官左衛門を斬り殺してしまいます。そこに駆けつけたのが、伝兵衛を恩人と仰ぐ久八。本物の茶入れは無事だと伝え、殺人の罪を着て伝兵衛を逃がします。ここまでが「四条河原の段」。

「堀川猿廻しの段」はおしゅんの実家。目の見えない母親は三味線を教え、兄の与次郎は猿廻しで生業を立てている。この段の始まりに、三味線を教えるシーンが出てきますが、これが手練手管の限りを尽くした、すごい音楽。三味線二丁でこれだけの表現力があるとは、ホントに仰天させられました。母親は長患いをしていますが、息子の与次郎は思いつく限りの嘘を並べて、母親を安心させようとします。そんな親子の関心事は、おしゅんのこと。河原の殺人現場に落ちていた小刀から、真犯人は伝兵衛と知れ、おしゅんは関わり合いになりたくない店から実家に戻されています。おしゅんと伝兵衛が心中をするんじゃないかというのが、専らの心配事。そこでおしゅんに退き状を書かせて縁を切らせ一安心。予定通り心中しようと夜陰に乗じてやってくる伝兵衛。兄の与次郎は二人の声に飛び起きておしゅんを引っ掴んで家の中へ。ところが、真っ暗な部屋で人違い。掴んできたのは伝兵衛でした。というドタバタ。それでも退き状をつきつける兄。ところが、目の見えない母と、字が読めない兄の二人ですから、退き状と見せておしゅんが書いたのは、あくまでも伝兵衛と死ぬ覚悟を吐露した書状。伝兵衛を思う娘の心に打たれた母親は、二人を行かせることに。できるだけ長く逃げ延びるようにと兄の与次郎は猿廻しで門出を祝福する。このラストの猿廻しがすごかったですねぇ。黒子の指にはめた人形の猿が二匹、くんずほぐれず見事な舞を披露していました。それから堀川の段の前場を語った竹本織太夫は4役を見事に演じ分けて、喝采を浴びておりました。


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昨日は13.1℃まで上がりましたが、所沢はちょっと風が冷たかったかな。今日は15.3℃まで気温が上がっています。


つるバラの新芽




昨日も今日もドピーカン。


春の訪れ、ヴェロニカ。


クロッカス




サハラ

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