今日もいい天気2023/02/12 14:39

快晴無風。最高気温は17.3℃。桜が咲く頃の陽気じゃないですか。




芝生の緑が少し戻ってきたような…




レディ・ヒリンドンは年を越して咲き続けました。




クロッカスの花が増えています。


花が一時しぼんでしまったマーガレットが、ちょっと復活。


サハラ



ジャルスキーとダニエラ・ドゥ・ニースで、モンテヴェルディの『ポッペアの戴冠』から「ただあなたを見つめ」。

今週は文楽ウィーク2023/02/14 19:57

昨日は5.5ミリとほんの僅かでしたが雨が降って地がうるおいました。今日は午前中はどんよりとした曇り空、午後からは日が出てきましたが、5メートルを超える北風が吹きつけて寒い一日でした。

現在隼町の国立劇場では「初代国立劇場さよなら公演」と銘打って、人形浄瑠璃三昧の公演を打っています。しかも近松門左衛門の代表作を揃えているというわけで、今日は『心中天の網島』を見て参りました。ベベン・ベン・ベンと腹に響く太棹の音色、情緒纏綿たる太夫の語り口、そして世話物とはいえ見どころ満載の人形芝居。この三位一体の総合芸術は絶やしてはいけない。そもそもの発祥の地大阪では橋本某がやけに冷たい仕打ちをしていますが、東京の国立劇場はほぼ満席の盛況でした。まあ大阪は文楽よりもしょせん吉本なんですね。

さてさて「天網恢恢疎にして漏らさず」という老子の言葉を外題に盛り込んだ『心中天の網島』ですが、去年(?)見た『曽根崎心中』に比べると近松の筆の走りが格段に進歩しています。『曽根崎心中』は遊女と生真面目な若者が絶対に現世では結ばれない定め故に、心中に向かって突き進んでいきます。『心中天の網島』の治兵衛は女房子供もいる。ところがこの女房(おさん)も芝居が進むにつれて、遊女小春に深く同情し、心中を思いとどまらせようと、自分のへそくりをそっくり差し出し、着物もかき集めて、亭主に小春を身請けさせようとする始末。さらにおさんと治兵衛はいとこ同士で、おさんの両親も健在で何かと治兵衛に口出しをする。治兵衛の兄(孫右衛門)も色々治兵衛の面倒を見て、時に治兵衛を諌め、必要とあれば金子も用意する。なんとも恵まれた親類縁者に囲まれて、あたしだったら「うざってぇなぁ」って怒りを顕にするところですが、治兵衛という人物は芝居の一方の主役でありながら、自分の石がない、いや医師がない、じゃなくて意思がフニャフニャとした人物でございます。一旦諦めた小春を、おさんが小春への同情から身請けするようにと言い出すと、治兵衛はすぐにそれに従って身請けの金を工面し始めます。

まあこういったかなり大人数の関係者一人ひとりの人情の機微を書き込んでいるので、かなりなが〜い人形芝居になっています。その中に、掛詞や、言葉遊びの類がてんこ盛りに詰め込まれて、ストーリーを追うのもなかなか難しい。でもいわゆる江戸時代の庶民の暮らしぶりやら人情を知る意味でも「世話物」は面白い。「二本差しが怖くて田楽が食えるか」っていう啖呵の語源もこの『心中天の網島』だったんですねぇ。

ちなみに国立劇場は今年の秋から取り壊しが始まって、2029年に新規オープンすることになっています。


女殺油地獄2023/02/17 12:05

文楽ウィーク第2弾は『女殺油地獄』。近松の傑作だとは思うんですが、あくまでも人形浄瑠璃でやった場合の話。歌舞伎やら、映画やらだとちょっと生々し過ぎて見てられないかもしれない。


文楽の書き割りも寝屋川沿いに一面の黄色い菜の花が咲き誇っています。お染久松の心中ものとは別ですが、やっぱり野崎詣りは菜の花がつきもの。河内屋の与兵衛もお詣りに。とは言っても信心あっての野崎詣でではなく、馴染みの女郎が会津の客に連れ出されていると聞きつけてちょっかいを出そうとやってきた次第。油屋の与兵衛は実の父親が死んで、番頭上がりの徳兵衛が継父。自分に対して厳しいことを言えないのをこれ幸いと、放蕩三昧の生活を送っています。野崎詣りの道中、喧嘩になり、侍に泥を浴びせてしまいます。馬に乗った侍の従者が伯父の山本森右衛門。かわいい甥っ子ではありますが、参拝の帰りに手討ちにしてやると、与兵衛を脅して立ち去ります。怖くてたまらない与兵衛は、たまたまお詣りに来ていた同じ町内の油屋である豊島屋のお吉に助けを求めます。お吉は与兵衛の泥汚れを洗ってやり、与兵衛は一人とぼとぼ大坂に帰っていきます。まあ、要するに喧嘩っ早い性格と、豊島屋のお吉の世話焼き癖が今後の展開へと繋がります。

河内屋では与兵衛の兄・太兵衛がやって来て、野崎詣りの一件により伯父が職を辞して浪人になったと告げます。徳兵衛には継子だからと与兵衛を甘やかせず、勘当すべきと言って帰っていきます。入れ替わりに与兵衛がやって来て、伯父が主の金に手を付けたので弁償するために銀三貫目が必要だと言い出します。先に太兵衛の話を聞いていた徳兵衛は相手にしませんでしたが、かえって与兵衛に足蹴にされます。さらに帰ってきた実の母親のお沢も踏みつける始末。徳兵衛はお世話になった先代のことを思って我慢してきましたが、事ここに至って与兵衛を勘当します。

豊島屋の段。端午の節句の前日、集金に忙しいお吉の旦那七左衛門。立ったまま一杯引っ掛けて、次の得意先へと出かけていきます。立呑は野辺送りの風習。不吉な予感が漂います。与兵衛は豊島屋の門口で借金取りに出会ってしまいます。銀二百匁(20万円)が明日になると五倍になるという約束。借金取りと別れ、豊島屋を覗いていると、徳兵衛がやってきてお吉に三百文(数千円)の銭を渡し、与兵衛に性根を入れ替えて店に戻ってきてほしいと諭してほしいと願います。さらにお沢(実母)もやって来ます。そのたもとからは節句の粽と幾ばくかの銭がこぼれ落ちます。お沢も与兵衛を諦めきれなかったのです。二人の親心にうたれたお吉は涙します。

そして二人が帰ったのを見計らって与兵衛がin。お吉は与兵衛の両親から預かった銭と粽を渡します。与兵衛はそんなはした金じゃ足らん。二百匁貸してほしいとせがみます。断られた与兵衛は、こんどは油を貸してほしいと言います。お吉が油を計りに桶に屈み込むと、そこにはキラリと光る与兵衛の脇差。油桶をひっくり返して逃げ惑うお吉。油に足を取られて二人は滑ったり転んだり。舞台の端から端までツーっと滑ったり、足元を滑らしてもんどり打って倒れたり。いやあ一大スペクタクル。与兵衛の人形遣いは桐竹勘十郎でしたが、人形を抱え込んで「ハアハア」肩で息をしていました。

お吉を殺した与兵衛は、集金の金を見つけて借金を返済するかと思いきや、そのまま遊郭へgo。

ピカレスクロマンでもない、不条理劇でもない、小悪党の没落劇とでも言うべきか。最後の油まみれの場面は、滑稽でもあり、スペクタクルでもあったんですが、何というか芝居としての面白みとか主人公への思い入れとか共感といった点では、全く異次元のよくわからん芝居でございました。


国性爺合戦2023/02/18 14:55

文楽ウィークの最後は『国性爺合戦』。お馴染み清朝に抵抗して明朝再興を掲げて戦った鄭成功のお話。1715年近松の作ですが、大坂の竹本座で17ヶ月のロングラン上演記録を作ったそうだ。当時の大坂人の8割は見に行った勘定。

韃靼に攻められている明国の窮状を救わんがため、日本に逃げていた老一官は日本人の妻と息子の和藤内を伴って明国に渡ります。韃靼と言ってもいわゆるタタールというよりは、北方の騎馬民族一般を指して言っているようで、実際は清(満州族)のことです。幕が上がると3人の姿。二手に分かれて獅子ヶ城を目指して旅立ちます。ここで芝居の最初から大スペクタクル。韃靼兵の虎狩りの場面に遭遇します。老いた母親と和藤内は、勢子に追い出された虎とご対面。虎は人間がまるごと入った着ぐるみです。まるで猫のような仕草でナメナメしたり、客席に向かって吠えてみたり、ついには義太夫語りの席にちょっかいを出して、太夫の扇子で頭を叩かれたり。まあ楽しい。着ぐるみで動き回るのも大変だと思いますが、いかにもという仕草が場内の笑いを誘っておりました。虎は和藤内の持つ伊勢神宮の守札を見せると、怯んでおとなしくなります。和藤内に手懐けられた虎は、韃靼兵に襲いかかり、たまらず兵士は和藤内に助けを求めます。和藤内は韃靼兵を手下に加え、獅子ヶ城に向かいます。

獅子ヶ城は甘輝将軍の城。老一官が明にいた頃もうけた娘・錦祥女は甘輝に嫁いています。錦祥女を通じて甘輝将軍を味方につけようという算段。和藤内にとっては錦祥女は義理の姉ということになります。甘輝将軍というのはどうも明や韃靼の正規軍ではなくて、いわゆる軍閥を率いているようです。現在は韃靼王に忠誠を誓っているらしい。老一官が楼門に姿を見せた錦祥女と涙の対面。しかし韃靼の警備が堅固で、老婆(錦祥女の継母)だけが縄をかけた姿で城内に入ることを許されます。城外にいる和藤内と老一官には、城内から流れ出す川に白粉を流したら味方につく、紅を流したら敵となると合図を決めておきました。

甘輝が城に帰ってきて老婆からの話を聞きます。しかし首尾悪しく甘輝は「いったん韃靼の王に忠誠を誓った者が、妻の縁で味方になっては義が立たない。そう言われないようにするためには、味方になるのなら、錦祥女を殺してからだ」と義理と人情の板挟み。わからんことを言い出して錦祥女を殺そうとします。錦祥女は紅を流します。実はこの紅、錦祥女が自害した血だった。その後を追って、和藤内の母(老婆)も自害。事ここに及んで妻の情に打たれた甘輝は韃靼征伐を決意。和藤内に「延平王国性爺鄭成功」の名を与えます。延平というのが現在の台湾らしいですね。でも果たして台湾に虎がいるのか。矛盾に満ち溢れた物語です。

最後場の将軍の衣装が素晴らしかった。一度楽屋に引っ込んで、多分人形を持ち替えて出てきたんでしょうが、まあ、金襴緞子、キンキラキンの見事な衣装。京劇よりももっと派手だったかも。話としては悲劇かと思いますが、最初の虎狩りの場面から最後の紅流しの段まで、極上のエンターテインメントを見せてくれました。近松門左衛門すごいぞ。

ところでお座敷遊びの「とらとら」。この芝居から作られたものらしい。衝立で仕切られたところに芸者と客が一人ずつ入り、杖をついた老婆、虎、和藤内のいずれかの格好をして、衝立から顔をだす。老婆は虎に食べられ、虎は和藤内に屈服し、和藤内は自分の母親ですから老婆に頭が上がらないという、まあ三すくみのじゃんけんみたいな遊びです。負けた方は盃を一杯飲み干すという罰ゲーム。ところで虎狩りというと秀吉の朝鮮出兵に付いていった加藤清正が有名で、和藤内の代わりに加藤清正とする遊び方もあるらしいんですが、それだとじゃんけんにならないですね。それに清正は鉄砲で虎を撃ったそうだ。

千里走るよな藪(やぶ)の中を
皆さん覗いてごろうじませ
金の鉢巻きタスキ
和藤内がえんやらやと
捕らえし獣(けだもの)は
とらとーら とーらとら
とらとーら とーらとら
とらとーら とーらとら




******************
ちょっと寒い日もありましたが、日に日に暖かくなってきました。今日の最高気温は15℃を超えています。明日は19℃まで上がるんだとか。



少しずつ芝の緑が戻ってきました。






クロッカス


黄色も咲き始めました。






レディ・ヒリンドン



トン・コープマン チェンバロ・リサイタル@所沢ミューズ2023/02/20 11:14

コロナが流行りだしてから2回ぐらい来日中止になったかな。ほんとに久々のトン・コープマンです。チェンバロのソロを聞くのはひょっとしたら20年ぶりぐらいかもしれません。カザルスホールや津田ホールがなくなって、室内楽の演奏会場が少なくなっていますね。

当然といえばそれまで。
薄めとはいえ、かつては髪の毛もあったんですが…


現在はこんな感じ。77か78歳かな。

正装というのか、マチネでしたからタキシードにブラックタイ。近頃オーケストラの指揮者でもかなりラフな格好をしていることが多いですが、本当に珍しい。

曲目はまずバッハのパルティータ第3番イ短調。比較的短いファンタジアの後アルマンド、クーラントと通常の組曲が続き、ブルレスカ、スケルツォという変わった楽章が付いています。いつものように短めのアーティキュレーションでグイグイ弾き進んでいくスタイルは今回も健在。次にバッハの平均律から第2巻の1番、5番、6番9番、15番。堂々とした第1番にから、ニ長調、ニ短調を演奏し、明るいホ長調に続いてト長調で締めるという、なかなか考えた配列。前奏曲+フーガの様々な魅力をコンパクトに聞かせてくれました。ニ短調の前奏曲あたりからかなりのめり込んだタッチになってきました。

後半はフローベルガーが2曲。トッカータの第2番と『ブランクロシュ氏に捧げるトンボー』。トッカータの急激なスケールに続くフーガ風の楽想。鮮やかな対比と調和でございました。トンボーはゆっくりとした曲調ながら、時に感情の高まりをダイナミックに表現し、最後の階段落ちの部分ではしっとりと落ち着いた弾き方でした。続いてブクステフーデの前奏曲ト短調。これもフローベルガーのトッカータと似た急速調の走句から始まり、フーガ、走句が3回繰り返されて堂々たるフーガで終わる大規模なオルガン曲ですが、足鍵盤をほとんど使用しないのでチェンバロでも弾けなくはない。緩急の切り替えがいかにもコープマンらしい。最後にバッハのフランス組曲第5番。愛らしい、可愛らしい、そして最後のジーグは華やかな曲集です。情緒纏綿たるサラバンドから、妙に明るく可愛らしいガヴォットのあたり、コープマンの自在なテンポ感が素晴らしかった。アンコールはルイ・クープランのハ長調のパッサカリア。悠揚迫らぬ堂々としたパッサカリアのテーマから、時に可愛らしく、時に輝かしい変奏を紡ぎ出すルイ・クープランの作曲技法を正面から捉えて、どちらかというとしっとりと落ち着いた演奏を聞かせてくれました。


**************
昨日は20℃近くまで気温が上がって、まるで春の陽気でした。暦通りに季節が進んでいるようです。

春一番が吹くかもなんて予想もありましたが、昨日は快晴無風でした。今日は一転、天気はいいけど北風がちょっと冷たく感じられます。




クロッカス


白はそろそろ盛りを過ぎたようです。


少しずつ芝の緑が増えてきたような気がします。