2/8 ワーグナー『タンホイザー』@新国立劇場2023/02/09 11:24

昨日は二国で『タンホイザー』を見てきました。スタッフ&キャスト、フォトギャラリー、動画等々はこちら。舞台写真はここ

ハンス=ペーター・レーマン演出の舞台は、今回で3度目の上演です。深いゲルマンの森を想起させる、視覚的にも十分納得がいく舞台で、繰り返し上演されるのも納得。初演は2007年の1月から2月ですが、その時のレーマンの制作ノートがプログラムに再録されていました。

「…現今、世界の歌劇場で芸術上の方針をめぐり、『歌手たちの戦い』が繰り広げられていることを考えますと、歌合戦を背景に芸術をめぐる議論がなされるこの『タンホイザー』は、その意味でもアクチュアルな作品だと考えます。
ただし、私は、作品が現代の諸問題につながることを示すために、人物をジーンズ姿で登場させたり、キャンピング場に置いてみたりはいたしません。…」

演出家の時代云々と言われて久しい昨今のオペラハウスですが、今から16年も前に演出家から歌手の立場を守る主張が行われていたとは驚きです。そしてこの4年後に図らずも、二国で半ズボン+キャンプ場の『コジ・ファン・トゥッテ』が上演されたということも、皮肉ではありますが紛れもない事実です。

そんな話はさておき、今回の上演は最初から最後まで見事な舞台でした。ヴェーヌスベルクの妖艶なバレエに始まり、ヴェーヌスとタンホイザーと絡み合い。そして「マリア」の叫びとともに、地上に戻ってくるタンホイザー。ここらへん息もつかせぬ展開です。羊飼いの少年が吹く葦笛の音色まで極上の響きがしました。第2幕のエリーザベトのアリア「歌の殿堂」から客人たちの入場行進曲。これは盛り上がりますねぇ。二国の合唱団は世界的に見ても超一流。去年の秋に聞いた『ボリス』のあの体たらくを汚名返上とばかりに、素晴らしいアンサンブルを聞かせてくれました。歌合戦の場面ではオケのハープがうまかったね。もちろんマイクで拾っているんだと思いますが、ヴォルフラムの潔癖主義の歌、それに対するタンホイザーの官能主義の歌。オケのアンサンブルを変えながら、手練手管を用いて歌の情緒を表現するワーグナーの音楽に脱帽。第3幕では巡礼の合唱が近づいてきて、やがて遠ざかっていく。この遠近感がたまらない。ヴォルフラムの「夕星の歌」もよかったね。でも夕星=金星はヴェーヌスなんですよね。潔癖主義の権化のようなお方でも、エロスの誘惑には抗えない。そしてタンホイザーの「ローマ語り」。

まずもって合唱の素晴らしさを称えたい。歌手もヴェーヌス、タンホイザー、エリーザベト、そして領主ヘルマン、いずれも見事な歌を聞かせてくれました。牧童の少年もよかったね。最後にオーケストラ。最初はかなりバラバラの感じがしましたが、尻上がりに調子がでてきて、第2幕のハープなど聞かせどころをしっかり押さえた音楽。舞台上のバンダの遠近感もなかなかよかった。


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