樫本大進+エリック・ル・サージュ @所沢ミューズ ― 2023/01/30 16:25
昨日(1月29日)は所沢ミューズで樫本大進とエリック・ル・サージュのデュオを聞いてきました。樫本大進はこのホールで2回ほど聞いていますが、コンスタンチン・リフシッツ、キリル・ゲルシュタインなど、ロシア系のピアニストと共演していました。今回はレ・ヴァン・フランセのピアニストであるエリック・ル・サージュとの共演。レ・ヴァン・フランセはあまり好みのグループじゃないけど、フランソワ・ルルー(オーボエ)、ジルベール・オダン(バソン)それにエリック・ル・サージュだけはいい音楽をしていると思います。
曲目はこんな感じ。シューマンとブラームスのソナタを集めたプログラムです。シューマンのヴァイオリン・ソナタは晩年に作曲されたものですが、ロマンティックというよりは、かなり直接的に感情の赴くままを表現した曲。樫本とル・サージュの二人はこの情熱的なソナタを生き生きと表現していたと思います。2曲めのブラームスは打って変わって内に秘められた情熱を控えめに語りだす音楽。シューマンの1番とは30年以上隔たった作品ですが、二人の音楽はブラームスの優雅なロマン派的特質を遺憾なく表出した演奏だったと思います。
後半はシューマンの3番。ん?て感じですよねぇ。シューマンに3番のヴァイオリン・ソナタがあったのか。本を正すと、F.A.E.ソナタと呼ばれていたものが始まりで、これはシューマンの友人アルベルト・ディートリヒ及びブラームと一緒にシューマンが作曲した、3人合作のヴァイオリン・ソナタで、3人共通の友人だったヴァイオリニストのヨーゼフ・ヨアヒムに献呈されたものだったようです。F.A.E.とは「自由にされど孤独に(Frei aber einsam)」というヨアヒムのモットーにちなんだもの。まあこのあたりは何となくそんな話を聞いたことがあるかなぁなんて気がしますが、実はシューマンはF.A.E.ソナタの初演の翌日から3日間で、自分が書いた楽章以外を全部書き直して、オリジナルのヴァイオリン・ソナタを作曲したんだそうだ。それがヴァイオリン・ソナタ第3番の正体。ただし誰も注目することなく年月が流れ、ショットから譜面が出版されたのはシューマン没後100年の1956年になってからだったのだそうだ。というわけで、当然のことながら初めて聞く音楽。演奏はかなりパッションがほとばしるというのか、情熱的な演奏。とりとめもなく熱い思いを語っていくような感じです。ただまとまりがないという感じではなく、しっかりと起承転結を抑えておきながら、さらに自由を求めて彷徨うといった趣。2人の演奏も、感情の機微を尽くして語る演奏だったと思います。
最後にブラームスのヴァイオリン・ソナタ第3番。何となく寂寥感漂う第1楽章。歌の世界に没頭する第2楽章。第3楽章のスケルツォ風の音楽を挟んで、最終の第4楽章は今までの迷いを吹き払うかのような堂々たるロンド。叩きつけるような楽想から始まり、かなり長く激情ほとばしる音楽が続きます。樫本大進もエリック・ル・サージュも丁々発止と切り結び、渾身の力をこめて弾き進んでいきます。一段とスケールアップした樫本大進、楽しいロマン派の一日でございました。
FAカップ。ブライトンVSリバプール。三苫の衝撃ゴール。
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