オノフリ バロック・ヴァイオリン・リサイタル 「哀しみと情熱のはざまで」2016/11/02 17:34

昨日(11月1日)は上野の文化会館小ホールでオノフリのヴァイオリンを聞いてきました。

ちょっと早めに家を出て、まず西洋美術館のクラーナハ展へ。ダ・ヴィンチとかあるいはデュラーなんかと時代が重なるはずですが、この人一人(というか親子2代というのか、その工房全体)がなんか独自の結界の中に籠もって、頑なに時代に抗っていたような気がするんですね。時代はルネサンス真っ只中から、マニエリスムへと移ろうとしていたのに、アルカイックというのかナイーブというのか、遠近法もちょっとへんてこりんで、人体のバランスもかなりおかしい。それでいてやたらと裸婦を描くんで、何ともはや微笑ましい感じさえします。春にはカラヴァッジョのユディットが来ていましたが、クラーナハのユディットもホロフェルネスの首の切り口が生々しく描かれていてなかなかいい。

西洋美術館を出てから国立博物館の「禅」という展覧会に突撃。4時頃に入ったら慌ただしいこと。さすがお役所、5時ぴったりに追い出されました。印象に残ったのは国宝の「油滴天目茶碗」。テレビではよく目にする奴ですが、本物を間近で見ると神秘的な小宇宙に吸い込まれていくみたいで、クラクラめまいがしてきます。まだ時間があったんで、広小路の亀屋でちょっと早めの夕食。ビールを少々きこしめしてから小ホールへ。大ホールの方は柱からオーストリア国旗が垂れ下がっていて、ウィーン・オペラの真っ最中。11月6日からは『ワルキューレ』だそうですが、この10月の新国の『ワルキューレ』がよかったからなぁ。キャストもウィーンよりは東京の方が遙かに魅力的だし、6万7千円のチケットは売れてるんだろうか? やっぱりブランドだからなぁ、それなりに行く人がいるんだろうな。

小ホール、満員ではなかったんでしょうが、ずいぶんお客さんが入っていました。まずビアージョ・マリーニの二つのヴァイオリンと通奏低音のためのソナタ “ラ・モニカ”。懐かしさを感じるような素朴なテーマから繰り出される変奏の数々が楽しい一曲。マリーニはモンテヴェルディの元でヴァイオリン奏者として活躍した人だそうで、ちょっとオペラ風な緩急の交代はそこらへんの影響なのかな。次にジョヴァンニ・アントニオ・パンドルフィ・メアッリの教会または室内のためのソナタ作品3から「ラ・チェスタ」。1曲目に比べるとどっぷり17世紀に漬かった音楽。ダイナミックな起伏、華やかな技巧が際立ちます。次にアントニオ・ガルダーラの室内ソナタ作品2−1。前奏曲が付いた舞踏組曲の形式で、安心して聞ける18世紀風のいわゆるバロック音楽。前半の最後にヴェラチーニのソナタ・アッカデミカ作品2−5。さすがにヴェラチーニになると一筋縄ではくくれない、いろんな要素が1曲の中に盛り込まれています。メッサ・ディ・ヴォーチェと言うらしいんですが、音のメリハリと言ったらいいのかな、管楽器のロングトーンのような音のふくらませ方、伸ばし方、曲の入りからちょっと驚かされます。目まぐるしく曲調が変化していくところはどことなくコレッリを連想させますが、でも不思議と安定感のある音楽ですねぇ。

後半はヘンデルのトリオソナタ作品2−6。それから、バッハの無伴奏でシャコンヌ。この演奏はイマイチしっくりこなかったな。付点を複付点に近いくらい伸ばして、歯切れよく弾き進んでいくんですが、まあ確かにバロック・コンディションのヴァイオリンだとこういう弾き方になっちゃうのかな。もうちょっと余裕、あるいは余韻が欲しかった。春に聞いたイブラギモヴァとか、最近モダンの人でもものすごくうまい人がどんどん出てくるんで、バロック本流ですよってのが、それだけでは「付加価値」にならなくなっているような気がします。シャコンヌ聞きながらちょっと変なことを考えていました。

最後にこれは極めつけ、コレッリの合奏協奏曲6−4。2人のソロに、リピエーノ部分は通奏低音が担当するという演奏。控えめなオルガンとチェンバロの通奏低音に対して、ソロがデーハーにやらかしてなかなか面白かった。哀しみと情熱という副題に沿って、憂鬱と快活、あるいはもっと単純に静と動といったコントラストを表現する試みだったんでしょう。ちょうど直前にクラーナハの「メランコリア」を見てきたばかりだったので、一層興味深い演奏会でした。

オノフリの他、ヴァイオリンの杉田せつ子もなかなか鮮やかな音楽をやっていました。オノフリのヴァイオリンが新しい楽器だったそうで、そのせいかどうか、いつもの深みのある落ち着いた音色とはちょっと違って、多少キンキンする感じがしたかな。チェンバロはレステッリ作のファーター。4年経って音の粒立ちがよくなってきたような気がします。そのチェンバロを弾いたリッカルド・ドーニ、オルガンの桑形亜樹子、チェロの懸田貴嗣も気持ちいいサポートを聞かせてくれました。特にオルガンとチェンバロの音色の対比は絶品でしたねぇ。

アンコールはビーバーの「技巧的で楽しい合奏」第6番の第1楽章。2台のヴァイオリンがアルペッジョを延々と聞かせる、超絶技巧(?)の楽しい一曲。それからこの日最初に演奏された、“ラ・モニカ”がもう一度演奏されました。

(「クラーナハ」という、ラの後に音引きを入れる表記は初めて見たな。)



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今日もどんより曇って肌寒い一日でした。最低気温10℃、最高気温12℃。

厚い雲から時折雨がポツポツと落ちてきます。


花がすっかり落ちたので、サルスベリの枝を切りました。

7月の初め頃から10月の半ば頃まで、3回か4回満開になりました。9月半ば頃の様子。漢字で「百日紅」って書きますが、まさにそのくらいの期間咲き続けていました。

細い枝は全部切ってしまいます。


かなりさっぱりしました。

クリムゾン・グローリー



シャルル・ド・ゴール



芝生はかなり出来上がってきました。もうちょっと光があると緑が映えるんですが。

パパメイアン

シルクジャスミン

今年5回目ぐらいの開花。


日本語で「月橘」って書く通り、柑橘系の香りですが、どことなく抹香臭い。


楽園

ホワイト・クリスマス


イエロー・シンプリシティ


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