都響 ターニャ・テツラフ インバル2016/09/10 20:14

本日(9月10日)は池袋の芸術劇場で都響の定期を聞いてきました。前半はターニャ・テツラフのソロでエルガーのコンチェルト。かのデュ・プレのレコードで有名な曲ですが、実演は滅多に聞いたことがないなぁ。ひょっとしたら初めてかもしれない。そのくらい曲の出来が悪いです。やっぱりイギリスの作曲家ですね。頭の中に生まれたイメージを譜面に定着するのが不得手で、ついつい形を整えることから入ってしまう。ブリテンと同じで才能が感じられない作曲家ですし、このチェロ・コンチェルトもオケのパートがスッカスカ。こうなるとソリストが頑張るしかないって曲ですが、ターニャのソロはスケール感がまるでないんだよねぇ。お兄さんとやった一昨年のブラームスのドッペルコンツェルトはものすごい名演だったけど、如何せん曲との相性もあるのかもしれません。下手だってわけじゃないですよ。でも聞いているのがかなり辛い演奏でした。

後半はシューベルトの第9。プログラムにはインバル80歳だとか、都響デビュー25周年だとかって喧しい限りですが、実は25年前の初顔合わせを聞いているんですニャー。もちろんベルリオーズはパス。ショスタコーヴィチの日と、『火の鳥』にモーツァルトの40番(?)だったかな、聞いたのは。それまでレコードで聞く限りインバルにさほど悪い印象はなかったんですが、モーツァルトの演奏の酷いことといったら、音楽以前といった感じ。ショスタコとストラヴィンスキーはまあ聞かせてくれたんですよ。でもモーツァルトはまるでダメ。譜面に作曲家の細かい指示がある近現代のものを、その譜面通りに再現するということは、非常に緻密にやってくれる、いわゆる職人肌の指揮者。でも自分の音楽を主張できるタイプじゃないから、モーツァルトは古色蒼然としたSPレコードを聴いているような気がしました。

この第1印象は間違いじゃなかったみたい。かつては定期会員だったことさえあるんですが、あのインバルとの最初の共演以来、都響はほとんど聞かなくなっちゃっいました。25年ぶりに聞いて、やっぱり何も考えていない指揮者なんだなって改めて思い知らされるはめになりました。シューベルトの9番は、ベートーヴェンの7.5番と言ってもいいくらいリズムが立って、しかもベートーベンよりもカラフルな色彩感溢れる曲なんですが、今日の演奏はまあフルトヴェングラー信者のための演奏会だったのかな。弦楽器が全体のトーンを決めてしまい、モノクロームでしかも奥行き感がまるでない音楽。都響は鬼門だったなと思い知らされた、クソ暑い土曜の昼下がりでした。(本日の池袋の最高気温32℃)